●イランとイスラエルの戦争
イランはアメリカのトランプ大統領から核兵器の放棄を協議すると同時にイスラエルとの対立が続いていた。その最中にイスラエルからの先制攻撃でイランとの戦争が始まった。イスラエル軍は先制攻撃でイランの革命防衛隊司令官の排除に成功。さらに核開発施設・軍事施設を破壊して段階的にイランの軍事力を奪っている。

イランは弾道ミサイルをイスラエルに向けて報復攻撃し軍事施設だけではなく民間人も巻き込んだ戦略爆撃を行っている。国際社会の多くの国がイスラエルによる先制攻撃の正当性を認め、これまでイスラエルに自制を求めていた欧米はイスラエル支持に回った。
イスラエル軍がイラン上空の制空権を獲得するとアメリカ・イギリスはイスラエル防衛に軍隊派遣を決定。アメリカとイギリスは中東に空母・戦闘機を派遣した。さらにアメリカのトランプ大統領は6月22日にB2爆撃機を投入してイラン核施設3カ所への攻撃を実行した。
●弱体化した革命防衛隊
国際社会の多くがイスラエルに自制を求めイランとの対話を求めていた。だがイスラエル軍がイランを先制攻撃し革命防衛隊司令官の排除に成功。さらに後任の司令官まで排除に成功した。イスラエル軍が革命防衛隊軍事施設・核開発施設の攻撃に成功しただけでも驚きだが、革命防衛隊司令官を連続して排除することは、革命防衛隊内部にイスラエルの内通者がいることを示唆している。
今のイランは宗教組織の革命で成立した国であり、イラン正規軍とイラン国民を信用していないから私兵である革命防衛隊を設立し恐怖政治でイラン国民を支配している。このためイラン国民がイスラエルに協力する土壌が存在するから、革命防衛隊内部にまで内通者が浸透している可能性がある。そうでなければ連続して革命防衛隊司令官の位置を正確に把握することは不可能だ。
●アメリカとイギリスの圧力
イスラエル軍が先制攻撃に成功しイラン上空の制空権を獲得したことが判明すると、アメリカとイギリスの方針が変わった。これはイスラエルの先制攻撃に正当性があるだけではなく、革命防衛隊司令官・核開発施設・軍事施設への攻撃に限定した戦術爆撃をしていることが決め手だと思われる。
【先制攻撃の区分】
・攻勢攻撃(Offensive Attack):国際社会で否定される。
・敵国の国防線を踏み破って奇襲攻撃を仕掛ける。
・防勢攻撃(Defensive Attack):国際社会で肯定される。
・自国の国防線の中で脅威国が戦争準備した段階で先制攻撃する。
先制攻撃は正義と悪があり、攻勢攻撃は第二次世界大戦の日本が真珠湾攻撃で行った先制攻撃とウクライナに侵攻したロシアが典型例。これらは今の平和を軍隊を用いて否定した行為だから悪にされた。それに対してイランが核保有を目指していると見なされた。これを戦争準備と見なしたのでイスラエルの先制攻撃は正義だと判断された。
実際に先制攻撃を攻勢攻撃と防勢攻撃で区分することは難しく、国際情勢と仮想敵国の関係から都合良く防勢攻撃にされた可能性もある。何故ならイランはイスラエル・アメリカと対立しており、アメリカのトランプ大統領はイランに核兵器を保有させたくない。そんな時にイスラエルが先制攻撃したのでイランへ核協議に戻ることを要請。だがイランがトランプ大統領の要請を断り核開発を継続することを公言。さらに悪いことにトランプ大統領はイランに無条件降伏を求めた。
■米軍のイラン核施設攻撃、各国・地域の反応-中国「強く非難」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-22/SY94EMT1UM0W00
【トランプ大統領のイラン攻撃前のメッセージ】
“核交渉に応じればイランを攻撃しない。だが拒否すればイランを攻撃する。B2爆撃機がイランに到着する前に決断しろ”
トランプ大統領は以前からイランに向けてメッセージを送っていたがイランは拒否した。このためトランプ大統領はB2爆撃機を投入してイラン核施設3カ所を攻撃。バンカーバスターを用いたならば地下施設は破壊されたと見るべきだ。ならばイランの核開発は停止状態と言える。
B2爆撃機による攻撃はイギリスも中東に軍隊を派遣することを公言した後に実行された。現段階ではイスラエル防衛部隊が大半だがイギリス空母も中東に派遣されている。アメリカはイスラエル防衛の軍隊を配置するだけではなく空母打撃群3個が確認されている。
現段階ではミサイル防衛部隊と航空戦力が確認されているのでイランへの地上侵攻の予兆はない。だがイスラエル防衛とは思えない空母打撃群の集中とB2爆撃機が集まることは、イラン奥深くまで縦深攻撃を行うことを示唆している。
●イランへの無条件降伏要求は悪手
トランプ大統領はイランに向けて無条件降伏することを要求したことは悪手だった。イランはイスラエルとの戦争を続けながらアメリカとの外交を継続していた。だがトランプ大統領から無条件降伏まで要求されたら面子を保てない。仮にイランが核協議に応じれば無条件降伏したと誤解される。さらにイランは宗教組織が革命で国を奪ったからイラン国民が革命防衛隊の弱体化と見なして反乱を起こす可能性が有る。
■Globe Eye News
Iran says if it’s a choice between ending uranium enrichment and going to war, we choose war.
■イランは、ウラン濃縮の停止と戦争の選択を迫られるなら、戦争を選ぶと述べている。
https://x.com/GlobeEyeNews/status/1936495886118367305
そのためかイランは戦争を選んだ。トランプ大統領がイランに無条件降伏を要求したことが原因だとすれば悪手と言える。基本的に国家間の戦争で無条件降伏は軍隊に対して用いられる。これは軍隊から武器を奪うことであり将兵の生命・人権を維持する。だが国家に対する無条件降伏は存在しなかった。
国家に対する無条件降伏は第二次世界大戦でアメリカが初めて国際社会に持ち込んだ。国際社会は強国の論理で動くからアメリカに同調したが、カサブランカ会談により米英ソは敗戦国は司法・立法・行政を持たない無権限状態と認識する。その結果として敵国民を直接攻撃することが正義と見なされた。
■参考例:ハンブルグ爆撃・ドレスデン爆撃・東京爆撃・広島・長崎への原爆投下。
(陸戦の法規慣例に関する条約<1907>・空戦に関する規則<当時審議中>違反)
これらは国家に対する無条件降伏は、戦争目的は国家の滅亡であり、敵国民の全ての権限を認めないになった悪しき戦例。これをイランが知っているなら徹底抗戦する。細かく言えば今のイランは宗教組織が国民を恐怖政治で支配する国。ならば革命防衛隊と家族は無人権として扱いイラン国民の人権を認める世界。
仮にイランが敗北すると生存している革命防衛隊将兵は東京裁判のようにテヘラン裁判(仮)が行われ処刑されることは間違いない。ならば革命防衛隊は徹底抗戦することを私は保証する。何故なら第二次世界大戦でドイツと日本は無条件降伏を突きつけられて徹底抗戦するしか選択肢がなくなった。第二次世界大戦を悲惨なものにしたのはアメリカが国家に対する無条件降伏を持ち出したからだ。
●核兵器使用かホルムズ海峡封鎖・マンデブ海峡封鎖が行われる
今のイランは明らかに選択肢を奪われた。そうなれば敗北か死だけ。しかも宗教組織が支配する国だから通常の思考ではない。東西冷戦期に核兵器で睨み合ったが核兵器は使われなかった。何故なら核兵器は自殺覚悟でなければ使えない兵器だから。当時の政治家は核兵器の恐ろしさを理解するまでは戦争で勝利する兵器だと誤解していた。だが冷戦中期頃から政治家は核兵器の恐ろしさを理解したので核兵器削減を行っている。要するに政治家が核兵器で攻撃されたくないから東西両陣営は核兵器を削減した。
だが宗教組織であれば既存の思考ではない。異教は邪教と見なして排除することがある。さらに革命防衛隊を用いてイラン国民を恐怖政治で支配するなら政治家の統治ではない。結論を言えば核兵器は自殺覚悟でなければ使えない。私は宗教組織は自殺覚悟になれば核兵器をイスラエル・アメリカ軍基地に使うと断言する。敗北すればイラン国民から排除されるし、戦勝国から処刑される。ならば自殺覚悟で敵を道連れにするはずだ。
そうなればイランはホルムズ海峡を封鎖して時間稼ぎと同時に世界経済を破壊して道連れを多くするだろう。何故ならホルムズ海峡は海上交通路の一部であり、封鎖されたら世界規模で経済が混乱することは確実視されている。石油が減少するなら石油価格が暴騰し日本国内でガソリン価格が暴騰する。さらに石油製品も暴騰する。だから世界はホルムズ海峡封鎖を警戒しているが日本政府は無関心。
さらに悪いことにイエメンのフーシ派はマンデブ海峡を航行する船舶を攻撃すると表明した。現段階では英米関係の船舶と思われるが、最悪の場合は民間船を攻撃することを想定すべきだ。ホルムズ海峡・マンデブ海峡の封鎖は機雷を用いれば簡単に実行できる。自走式機雷や浮遊機雷を用いれば戦力劣勢でも封鎖できるからだ。
●日本の対応策
日本は集団的自衛権に従い海上自衛隊・航空自衛隊を中東に派遣すべきだ。これは既に展開している海洋国家アメリカ軍・イギリス軍と連携するから、海洋国家日本としても都合が良い。海洋国家は海上交通路から国益を得ているからホルムズ海峡・マンデブ海峡防衛は日本の国益になる。このため同じ海洋国家としてアメリカ軍・イギリス軍と連合することは集団的自衛権であり信頼される派遣になる。
水面下でアメリカから海上自衛隊・航空自衛隊の派遣要請が出ているかも知れない。今後公式にアメリカから海上自衛隊・航空自衛隊の派遣要請が出たならば日本政府は派遣すべきだ。これは集団的自衛権であり時の強国が派遣要請を行うと参加するのが国際社会のマナー。何故なら派遣することは“我が国は火事場泥棒ではない”ことを国際社会に示す行為だから。
戦前の日本政府はこの国際社会のマナーを知らないから日本軍を派兵しなかった悪例がある。これで時の欧米は日本を火事場泥棒と見なして警戒し最終的に敵視した悪例がある。だからこそアメリカから派遣要請があれば派遣しなければならない。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)