イスラエルによるイラン攻撃開始前日の12日、国際原子力機関(IAEA)はイランの核計画が不透明なうえ、「IAEAの核監視業務に協力する義務に違反した」と認定する非難決議を賛成多数で採択した。すなわち、イランの核開発が国際機関によって改めて「問題あり」とされた。
それを受け、イスラエルのネタニヤフ首相は13日、「イラン攻撃は同国の核関連施設と軍事施設への攻撃が目的だ」と述べた。同首相にとって、IAEAのイラン非難決議はイスラエルのイラン攻撃にお墨付きを得たようなものだったはずだ。
また、イランは1979年の革命以来、イスラエルを最大の敵と見なしてきた。アハマディネジャド大統領(当時)は2008年6月、「イスラエルを地図上から抹殺すべきだ」と訴えた。しかし、ここにきてイランが長年、軍事支援してきたイスラム過激武装組織はことごとく弱体化している。
2023年10月7日にイスラエルに奇襲テロを行ったパレスチナ自治区のイスラム組織ハマスはイスラエル軍の報復攻撃で指導者は殺害され、壊滅寸前だ。レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師は昨年10月、イスラエル軍に殺害された。一方、イランがロシアと共に軍事支援してきたシリアのアサド政権は昨年12月、崩壊した。すなわち、イランが巨額の資金と軍事援助を提供してきた反イスラエル包囲網はほぼ無力化されている。
イランの同盟国ロシアは、イスラエルを批判したとしてもイランに具体的な軍事支援はできないだろう。ロシアとイラン両国は長い間、軍事協定の締結を目指してきたが、ロシアの北朝鮮との軍事協定のように、相互軍事支援という内容はない。イランがイスラエル軍に攻撃されたとしても、ロシアには軍事支援の義務はない。
(ウィーン小川敏)