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イスラエル 人質帰還求め各地でデモ ハマス襲撃から600日

予備役45万人招集へ

5月12日、テルアビブでの集会でハマスの人質になっているイスラエル兵エダン・アレクサンダーさんの写真を掲げる市民。アレクサンダーさんはこの日解放された(UPI)
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争は5月28日、ハマスによる襲撃と開戦から600日目を迎えた。テルアビブやエルサレムなど全国各地では、今もなおパレスチナ自治区ガザで拘束されている人質の家族ら数千人がデモ集会に参加し、解放と戦争終結を呼び掛けた。一方、イスラエル政府は、45万人の予備役招集を承認した。(エルサレム森田貴裕)

2023年10月7日にハマスがイスラエル南部への奇襲攻撃を開始した時刻の午前6時29分、国内各地に集結したデモ参加者は、黄色の風船や旗を掲げて隊列を組み、人質への連帯を示す黄色いリボンのシンボルを作り、ガザ地区に残る人質58人の帰還を求めた。テルアビブのビーチには、「58」と「600」の数字、「今すぐ彼らを救え」という言葉が刻まれた。

この奇襲攻撃で殺害または連れ去られたイスラエル人の家族1500人で構成する「10月評議会」は、テルアビブのクネセト(国会)議長の邸宅前で抗議活動を行い、クネセトの解散を要求。評議会は声明で、「政府は遺族に背を向け、イスラエル史上最大の惨事の調査を行わないと公然と明言した」と非難。「われわれは600日目、まさに攻撃が始まったその時刻に、新たなキャンペーンを開始した。クネセトを解散し、透明性や説明責任、そして真実を重視する新政府を樹立するための即時選挙を実施することを求める」と訴えた。

ハマスによるイスラエル南部への襲撃では、251人が人質となり、約1200人が殺害された。その後、イスラエルのハマスに対する軍事作戦により、ガザ地区では5万4000人以上のパレスチナ人が死亡している。

イスラエルのネタニヤフ首相は5月27日、今もハマスに拘束されている58人の人質問題について言及した。その中で「生存者や戦死者も含め、全ての人質の解放に全力を注いでいる」と強調。「生存が確認されている人質は20人で、死亡したとみられる人質が最大38人いる」ことを明らかにした。

5月初め、ネタニヤフ氏は、これまで生存が確認されていた人質24人のうち3人の安否について深刻な懸念があると述べていた。数日後、ガザで拘束されていたイスラエル軍の男性兵士1人がハマスによって解放された。イスラエルと米国の二重国籍者で、米国籍を持つ人質の中で唯一の生存者とみられていた。

この兵士の解放に向けては、米国がテロ組織に指定するハマスと異例の直接交渉をしていた。イスラエルには事前に伝えていたという。ハマスは、停戦と人質解放の合意を仲介しようとしているトランプ米大統領への善意の表明だとしている。ハマスは恒久停戦を求めているが、ハマス壊滅を目指すイスラエルは拒否している。

ネタニヤフ氏は28日、ガザ地区でイスラエル軍が行った攻撃で、ハマスの最高幹部ムハンマド・シンワル氏を殺害したと明らかにした。ムハンマド氏は、昨年10月に殺害されたハマスの前最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏の弟で、イスラエルが最重要指名手配者の一人として追っていた。

イスラエル軍は5月13日、ガザ地区南部ハンユニスの病院に対して大規模な空爆を実施し、地下にあるハマスの司令センターを破壊したと発表していた。この攻撃が、ムハンマド氏を標的としたものだったとされていたが、生死は明らかにされていなかった。23年10月にイスラエルとハマスの戦争が始まって以降、イスラエルはハマスの壊滅と人質の解放を目指し、多くのハマス幹部を殺害してきた。

ガザ地区では、イスラエルによる軍事作戦が続いている。イスラエル政府は5月26日、今後3カ月間で、最大45万人の予備役を招集することを承認した。23年10月7日以降、イスラエル軍は30万人近くの予備役を招集した。今年5月末の時点で約10万人の兵士が従軍している。

イスラエルは、ハマスとの交渉を有利に進め、人質解放の実現のため、今後もガザ地区への大規模な軍事作戦でハマスに圧力をかけ続ける可能性がある。

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