トップ国際中東シリア首脳と米大統領が会談 イスラエルと国交正常化合意も

シリア首脳と米大統領が会談 イスラエルと国交正常化合意も

秘密裏に協議

14日、サウジアラビアの首都リヤドで、シリアのシャラア暫定大統領(左)と握手するトランプ米大統領(中央)(サウジ王室提供)(AFP時事)
トランプ米大統領は5月14日、サウジアラビアの首都リヤドで、シリアのシャラア暫定大統領と会談し、アラブ諸国とイスラエルとの国交正常化合意(アブラハム合意)にシリアも参加するよう呼び掛けた。報道によると、イスラエルとシリアは秘密裏に協議を行っているという。(エルサレム森田貴裕)

中東を歴訪していたトランプ氏は5月13日、リヤドで演説し、対シリア制裁を解除する方針を表明した。15日には、サウジの事実上の実権を握るムハンマド皇太子の要請を受け、湾岸協力会議(GCC)加盟諸国との首脳会議の直前に、シリアのシャラア氏と約30分間会談した。米国とシリアの両国首脳による直接会談は25年ぶりとなった。シリアで影響力を強めるトルコのエルドアン大統領も電話で会談に加わった。トランプ氏は会談後、記者団に対し、シャラア氏はアブラハム合意への参加を支持しているとして、「シリア大統領は、自国の安定が回復すればイスラエルを承認するだろう」と述べた。

アブラハム合意は2020年に発効し、1期目のトランプ政権の支援の下、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンがイスラエルと国交を樹立した。この合意は、敵対するイランの包囲網を構築するためのものだった。その後、モロッコやスーダンもこの合意に参加し、外交、安全保障、経済関係に根差した地域協力の枠組みを確立した。

一方シリアは、レバノンやパレスチナにおける代理戦争、近年のシリア内戦における間接的な衝突などによってイスラエルと長く対立してきた。11年以降、イスラエルはシリア国内のイランおよび代理武装勢力の拠点を定期的に攻撃している。

シャラア氏は5月7日、敵対するイスラエルとの緊張緩和に向け、仲介役を通じてイスラエルと安全保障関連の協議を行っていることを明らかにしたが、外交関係の可能性についてはコメントを避けていた。

イスラエルのメディアによると、協議はUAEやカタールが仲介しているという。アゼルバイジャンで最近開かれたシリア暫定政府代表らとの会合には、イスラエル軍の作戦局を率いるオデッド・バシューク少将が出席。トルコ代表も同席したと報じられている。

こうした中、シリアとイスラエルの和平の枠組みが流出した。

米国の中東ニュースサイト「メディアライン」が閲覧したとする漏洩(ろうえい)文書には、大使の交換と大使館設置を含む正式な外交関係の樹立、テロリズムと過激主義に対する安全保障上の連携、共存と相互理解を促進するための草の根交流と文化交流など、提案された枠組みの概要が示されているという。また、メディアラインは、情報筋の話として、シャラア氏は「孤立からの脱却、平和と発展の新たな時代を切り開く」ため、アブラハム合意の基本原則である主権の相互承認、完全な外交関係、敵対行為の終結、経済・文化・安全保障分野における協力を受け入れる用意があると表明していると報じた。

シリアのアナリストであるムスタファ・ザフラン氏はメディアラインで、今回の動きは中東地域および国際的な動向から切り離して考えることはできないと語った。ザフラン氏は、「米軍の中東地域からの撤退、トルコやイランといった地域大国の台頭、直面する経済課題の増大を受け、多くのアラブ諸国は戦略を見直し、パートナーシップを築くための新たな道を模索している」と述べた。経済アナリストのアブドル・ラハマン・マフムード氏は、このアラブ諸国の傾向は、特にサウジやトルコとの関係改善を踏まえると、イスラエルがアラブ・イスラム世界において外交的影響力を拡大しようとする動きと一致していると指摘する。

イスラエルのメディアによると、シャラア氏は、ゴラン高原の将来について協議する用意があると表明している。シリア政府当局者によれば、ゴラン高原に関して協議が継続中で、近い将来に「何らかの合意」が成立する可能性があるという。ゴラン高原は1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領。81年に併合されたが、国際社会は認めていない。

2期目となったトランプ米政権によって、シリアがアブラハム合意に参加しイスラエルと国交正常化する可能性が出てきた。

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