トップ国際中東イスラエル軍 シリアで空爆強化、地上侵攻

イスラエル軍 シリアで空爆強化、地上侵攻

3月25日、イスラエル軍の砲撃を受けてシリア南部で上がる煙(AFP時事)

イスラエルが4月初旬、シリアで空爆を強化し、地上侵攻を行った。2024年12月のシリアのアサド政権崩壊によって、シリアにおけるイスラエルとトルコの利害の対立が生じ、両国の関係を巡って衝突の危機が迫っている。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍が4月3日、シリア南部ダルアー県ナワ近郊で地上作戦を実施した。この前夜、イスラエル軍は、中部ホムス県のティヤス空軍基地およびパルミラ空軍基地、ハマ県の主要空港など五つの地域を標的に空爆を行った。この空爆と地上侵攻により、13人が死亡した。

イスラエルのカッツ国防相は、攻撃について、「標的となった地域でトルコ軍が活発に活動を展開している情報がある」と強調。イスラエル軍は緩衝地帯にとどまり、自国の安全に対する脅威に対して行動すると述べた。シリア暫定政府に対しては、「イスラエルに敵対する勢力がシリア領内で活動することを許せば、大きな代償を払うことになるだろう」と警告している。中東専門家らは、トルコがティヤス空軍基地や北部アレッポ県のメナグ空軍基地の施設をアップグレードして部隊の展開を支援し、高度な防空システムを導入していると伝えている。

トルコが支援するシリアの軍事基地を標的としたイスラエル軍による攻撃で、数十人の民間人や軍人の死傷者が出たことで、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国がイスラエルの攻撃を非難した。

元シリア軍将校のシュメル・アハメド氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、トルコはイスラエルの軍事的プレゼンス拡大に対応して、シリアの軍事基地の建設に迅速に動いたと述べた。トルコは暫定政府を支援し、シリア軍をトルコの利益を守るための信頼できるパートナーまたは代理勢力にしたいと考えているという。アハメド氏は、「トルコのS500のような高度な防空システムがシリア中部に配備されれば、イスラエルの航空機やドローンのほぼすべてがレーダー探知範囲内に入ることになる」と語った。

国際紛争専門シンクタンクの国際危機グループ(ICG)の上級顧問ダリーン・カリファ氏とイスラエル上級アナリストであるマイラブ・ゾンゼイン氏が3月17日に発表した報告書によると、イスラエルの現在の戦略は裏目に出る可能性があり、イスラエルを受け入れる用意があるように見えるシリアを敵国に変えてしまう恐れがあるという。

イスラエルは、シリアのアサド政権が崩壊した後、シャラア暫定大統領が率いる「シャーム解放機構」(HTS)がジハード主義の過去を捨てたとは考えておらず強い疑念を抱き、暫定政府を潜在的な安全保障上の脅威とみなし、一連の攻撃的な軍事行動を取った。イスラエル軍は最初の2日間で、空爆を500回近く実施し、シリア軍の兵器や武器庫の多くを破壊した。化学兵器も含まれていたという。それに加え、占領下のゴラン高原に駐留する地上部隊を1974年の両国間の兵力引き離し協定で定められた非武装緩衝地帯に派遣した。軍はその後、村々に九つの前哨基地や検問所を設置してパトロールを実施。また、ヘルモン山のシリア側頂上に新たな陣地を構えた。さらに、イスラエルはシリア南部により広範な非武装地帯を設置する意向を表明している。

カリファ氏とゾンゼイン氏は、イスラエルがシリアで空爆や領土拡大、政治への干渉を続ければ、暫定政府はさらに守勢に立たされ、イスラエルの軍事的プレゼンス拡大を阻止するため、トルコとの防衛協力を深める可能性があると主張する。当初イスラエルに対して融和的だったシャラア暫定大統領は、国際社会に対し、シリアにおけるイスラエルの軍事的プレゼンスを終わらせるよう圧力をかけるように呼び掛けている。

トルコは、イスラエルによるシリアの軍事施設への度重なる攻撃が、暫定政府の脅威に対する抑止能力を損なっていると批判した。トルコはイスラエルとの直接の衝突は望んでいないとしているが、シリアで空軍基地は拡大しており、イスラエルの懸念をさらにかき立てている。

イスラエルがシリアにおけるトルコの拠点化を阻止するために空爆を続ける可能性がある。

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