トップ国際中東ガザ停戦、2カ月で終了 住民が異例「反ハマス・デモ」

ガザ停戦、2カ月で終了 住民が異例「反ハマス・デモ」

3月26日、パレスチナ自治区ガザ北部ベイトラヒヤで、イスラム組織ハマスの支配に反対するデモ(AFP時事)
3月26日、パレスチナ自治区ガザ北部ベイトラヒヤで、イスラム組織ハマスの支配に反対するデモ(AFP時事)
イスラム組織ハマスとイスラエルの停戦延長交渉が決裂し、3月18日、イスラエル軍による大規模作戦が再び開始され、約2カ月続いた停戦は終了した。パレスチナ自治区ガザでは、住民がハマスに対し異例の抗議デモを行った。(エルサレム森田貴裕)

米国やカタールなどの仲介で今年1月19日、イスラエルとハマスは停戦に入った。停戦合意の第1段階でハマスは人質30人を解放し、イスラエル側はパレスチナ人囚人約2000人を釈放した。その後、イスラエル軍の完全撤退と恒久的停戦を目指した第2段階への移行を要求するハマスと、残る人質の解放を求め第1段階の停戦延長を主張するイスラエルが対立し、交渉が決裂。イスラエル軍は3月18日、ガザ地区への激しい空爆を再開した。新たな地上作戦も開始され、約2カ月に及んだ停戦に終止符が打たれた。

ガザ地区北部のベイトラヒヤで3月下旬、ハマスに対する抗議デモが行われた。数百人から数千人規模のパレスチナ人が、「ハマスは出て行け」「死はもうたくさんだ」と叫び、ハマスに対する異例の抗議活動を繰り広げた。抗議デモは、ガザ地区からイスラエルに向けて再びロケット弾が発射され、これを受けたイスラエル軍がベイトラヒヤ住民に対し空爆前の退避命令を出した翌日に発生した。この後3日間、抗議デモはガザ地区全域で行われた。

ベイトラヒヤで最大の氏族を率いるヒシャム・アルバラウィ氏は、SNSに動画を投稿し、「ハマスはガザを破壊した。われわれはハマスの支配体制に反対しており、このままでは2、3年後にはガザの住民全員が犠牲になるだろう」と語った。その後、アルバラウィ氏はメディアのインタビューに応じ、「われわれは、ハマスに人質全員の解放を要求し、イスラエルにはパレスチナ人囚人の解放を求める。ハマスはわれわれの一員だが、彼らの支配下で生きることはできない。われわれは白旗を掲げなければならない」と表明した。

イスラエルのカッツ国防相は、ガザ地区の住民に送った声明の中で、「デモ参加者は、ハマスの撤退と人質全員の即時解放を要求している。これが戦争を終わらせる唯一の方法だ」と述べ、ガザ住民への支持を表明した。一方のハマスは、「抗議デモはイスラエルとパレスチナ自治政府によって推進されている」と主張。ハマスが戦争や人質交渉に対する姿勢を軟化させる兆候はなく、恒久的停戦とイスラエル軍の完全撤退にのみ固執している。

SNS上では、ガザ地区中部の住民が銃を発砲してハマス警官を殺害した動画が拡散し、反ハマス感情の断片が浮き彫りになった。この事件の発端は、小麦粉の貯蔵所前で争いが起き、警察が制圧に乗り出した際、住民の1人が死亡。デイルアルバラで有力な家族がSNSで声明を出し、親族が死亡したことの復響として警官を殺害したことを発表した。ガザ市で起きた別の事件では、ある家族が、「ハマス警官に親族を殺害された」と非難し、復讐を宣言している。

これに対し、ハマスは声明で、「いかなる勢力もガザ地区で混乱を広めたり、法の裁きを下したりすることを許さない」と述べ、犯罪者を裁きにかける措置を開始すると発表した。また、別の声明で、「警官殺害は、パレスチナ内部の戦線を崩壊させ、混乱と無政府状態を引き起こそうとするシオニスト(イスラエル)の目的にかなう犯罪にすぎない」と述べた。ハマスは3月末、イスラエルに協力したとして、抗議活動に参加したパレスチナ人数人を処刑した。その後、抗議デモは発生していない。ハマスは、デモを許さず、支配体制を維持するために同族のパレスチナ人住民を殺害することもためらわない。ハマスは2007年6月にガザ地区を武力で制圧した際、拷問や殺害を行うなどして自治政府主流派でライバルのファタハ勢力を暴力的に追放している。

ネタニヤフ首相は、ガザ地区で戦闘をしながら人質解放交渉も続けるという。テルアビブ大学のモシェ・ダヤン中東アフリカ研究センターのパレスチナ研究フォーラムの責任者であるミハエル・ミルシュタイン氏は、イスラエルのメディアで、「ガザ地区での現在のイスラエルの軍事作戦では、残る人質全員を解放できる可能性がほぼゼロであり、真の目的は、完全制圧にあるのではないか」という疑念を呈した。

ガザ地区での死者数は、5万人を超えている。戦闘再開で犠牲者が増え続けるのは必至だ。

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