トップ国際中東アラブ連盟 ガザ再建計画を採択 米・イスラエル 「安全の保証なし」と拒否

アラブ連盟 ガザ再建計画を採択 米・イスラエル 「安全の保証なし」と拒否

へ 4日、エジプト・カイロで記念撮影に臨むアラブ連盟(21カ国 ・1機構)加盟国の首脳ら(ヨルダン王室提供)(EPA時)
アラブ連盟(21カ国・1機構)は4日、エジプトの首都カイロで緊急首脳会議を開き、エジプト主導のパレスチナ自治区ガザの再建計画について議論し、採択した。トランプ米大統領が2月に提案したガザ地区の住民移住による復興構想の代替案に対して、米・イスラエルは安全の保証がないとして断固拒否した。(エルサレム森田貴裕)

アラブ連盟のアブルゲイト事務総長は4日、カイロでの緊急首脳会議で「パレスチナ人は自分たちの土地で平和に暮らす権利がある」「この地域における米国の違法な計画や構想は受け入れられない」と強調した。

アラブ連盟のガザ地区再建計画は、総額530億㌦(約7兆9500億円)で5年をかけて3段階で進められる。第1段階は約6カ月間で、大量のがれきや不発弾を撤去する。計画では、ガザ地区の一部を順次再建していく間、150万人いるとされるパレスチナ人避難民を仮設住宅のある7カ所に移動させる。また、エジプトとヨルダンが警察の訓練を主導し、パレスチナ自治政府がガザ地区の統治任務に復帰できるようにするとしている。

トランプ米大統領は2月初旬、15カ月に及ぶイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘で荒廃したガザ地区を米国が所有して経済再建を進め「中東のリビエラ」に変え、200万人以上のパレスチナ人住民をエジプトやヨルダンなど近隣諸国に移住させるという復興構想を示した。これに対し、パレスチナは猛反発し、エジプトやヨルダンを含むアラブ諸国も強く非難した。戦時の文民保護を定めたジュネーブ条約は、占領地域からの住民の強制移住を禁じており、トランプ氏の構想は同条約に違反する可能性がある。エジプトやヨルダンは、ガザ地区からパレスチナ人避難民が領土へ流入してくることについて深く懸念している。

テルアビブ大学のモシェ・ダヤン中東アフリカ研究センターのパレスチナ研究フォーラムの責任者であるミハエル・ミルシュタイン氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、エジプト主導によるガザ地区再建計画について、「9割が財政面に焦点を当てており、戦略的な側面は非常に浅い」と指摘。「ハマスを解体する方法や長期的な安全保障協定をどう実施するかについて、実際の議論はまったくない」と批判した。米国とイスラエルは、エジプトの提案には安全保障上の保証がなく、ハマスの軍事力に対処できていないとして、断固として拒否している。

米地政学アナリストのスティーブン・ターナー氏は、メディアラインで、エジプトが提案した再建計画に重大な欠陥があると指摘した。「アラブ連盟の計画は非武装化にまったく触れておらず、安全対策が講じられなければ、イスラエルと米国は絶対に受け入れないだろう」と述べた。

アラブ連盟はエジプトの提案を公式に承認したが、サウジアラビアのムハンマド皇太子とアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領はカイロでの首脳会談を欠席。エジプト主導の計画に不満を示した。ミルシュタイン氏によれば、両首脳はこのエジプトが提案した計画を戦略的に不十分だと考えており、ガザ地区の再建プロセスに米企業を関与させることで、それを改善する方法を模索。緊急金融パッケージだけでなく、長期的なビジョンを望んでいるという。ターナー氏は、「サウジはイスラエルとの正常化を望んでおり、舞台裏ではイスラエルとの戦略的協力の恩恵を受けている。未完成の計画のためにそれを危険にさらすことはない」と述べた。

イスラエルは、1月19日に始まった停戦合意の第1段階を4月中旬まで延長することを支持。イスラム教のラマダン(断食月)とユダヤ教の過ぎ越しの祭りの期間中に残る人質59人の解放を求めた。ネタニヤフ首相は、ハマスに対し、人質が解放されなければ「想像もできない結末を迎える」と警告した。一方、ハマスは停戦延長についてイスラエルが当初の協定に違反していると非難。恒久停戦に向けた交渉など第2段階に進めることを要求している。

ハマスを壊滅させ、人質全員を解放するというイスラエルの目標はまだ達成されておらず、戦争終結はまだ遠い現状だ。

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