
イスラエルのネタニヤフ首相は4日、米首都ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。トランプ政権の重要優先事項として、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の可能性について話し合われた。トランプ氏は、イスラエルとサウジとの和平を実現し、敵対するイランの核武装を阻止する構えだ。(エルサレム森田貴裕)
4日のホワイトハウスでの米イスラエル首脳会談では、イスラエルとサウジの国交正常化の可能性のほか、敵対するイランに関する米国とイスラエルの協力や、パレスチナ自治区ガザからパレスチナ人住民を近隣諸国へ移住させるというトランプ氏の提案などについても話し合われた。ネタニヤフ首相は、あらゆる分野で同盟関係を大幅に強化する必要性を強調。「米国にはイスラエルよりも優れた同盟国はない」と念を押した。
1期目のトランプ政権では、敵対するイランの包囲網を構築するため、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化「アブラハム合意」を進めたことによって、2020年にアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンがイスラエルと国交を樹立した。その後、モロッコやスーダンもこの合意に参加した。
トランプ氏は4日、会談後の共同記者会見で、「われわれは中東における半世紀で最も重要な和平協定を達成した」と自身の外交実績を強調。「多くの国が間もなくアブラハム合意に参加すると信じている」とした上で、「中東に平穏と安定を取り戻し、この地域のすべての人々に繁栄の機会と希望を広げるだろう」と語った。トランプ氏は、サウジはイスラエルとの国交正常化の前提条件としてパレスチナ国家の樹立を要求していないと主張した。これはサウジのこれまでの公式声明と矛盾している。数時間後、サウジは反発し、長年の立場を繰り返した。
現在、イスラエルとサウジとの和平は手の届くところにあり、2期目となったトランプ氏はそれを実現する決意だ。トランプ政権は、仲介役としてサウジとイスラエルの国交正常化へ向けた交渉を再び進めようとしている。サウジは合意条件として、米国によるサウジの安全保障の強化と共に、民生用核開発への技術協力などを要望している。ただ、サウジは、パレスチナ国家に同意するまではイスラエルを承認しないと明言している。
ストラテジー・インターナショナル・シンクタンクの中東のエネルギー・安全保障の専門家のシリル・ウィダーショーベン博士は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「公式的にはサウジはパレスチナ国家問題が解決されない限り、いかなる関係や正常化の合意もする気はない」と述べた。サウジとイスラエルの正常化は依然として実現が難しいものの、舞台裏では静かな協力関係を維持していると強調した。ウィダーショーベン氏によれば、海外のイスラエル企業を通じ第三国経由で隠れた取引がなされ、人工知能(AI)やサイバーセキュリティー、さらには主要な経済および安全保障の分野で協力が実施されているという。公式的には「イスラエル製」ではないと主張しているだけだと述べた。サウジは、対イランなどの安全保障問題でイスラエルと協力することになる。イランの脅威に対処する際にサウジ領空を経由したイスラエル空軍機の行動は明らかだ。
トランプ氏は、敵対するイランの核兵器保有を認めないと改めて表明した。イランに対し再び制裁措置を強化し最大限の圧力をかける方針だ。「イランの石油輸出をゼロにし、中東各地のテロ組織に資金を提供しているイランの支援活動を抑止する」「イランの核開発計画を阻止するためならばイラン首脳との会談も検討する」と述べた。トランプ氏はまた、米当局が阻止したと主張するイランによる自身の暗殺計画に言及し、「もしイランが再び暗殺を企てれば厳しい報復措置を取る」と警告した。
一部の専門家は、イランに対する制裁だけでは不十分で、軍事行動が必要になる可能性があると警告している。トランプ氏は大統領に復帰してわずか数日で、前米政権による軍事援助の禁輸措置を解除し、必要に応じてイスラエルに強力な攻撃力を与える武器の提供を可能にした。これによって、イスラエルによるイラン核施設への攻撃が行われる場合、米国との連携なしに単独で攻撃が行われることはないだろう。