トップ国際中東ガザ6週間停戦、人質解放へ ハマスは勢力を増強

ガザ6週間停戦、人質解放へ ハマスは勢力を増強

ガザ市で赤十字のチームに引き渡される4人のイスラエル兵捕虜をエスコートするハマスの戦闘員たち。=2025年1月25日土曜日(UPI)

米国やカタールなどの仲介で、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が1月19日に発効した。ハマスはパレスチナ自治区ガザで拘束していた人質を解放し、イスラエル側は収監していたパレスチナ人囚人を釈放した。ガザ地区では、人道支援物資を載せたトラックが入る一方で、ハマスが勢力を増強している。(エルサレム森田貴裕)

ハマスは2023年10月7日、戦闘員をイスラエル南部に送り込み、前代未聞の急襲を行った。約1200人のイスラエル人を殺害し、251人を人質に取った。これに対しイスラエルは、ハマスの壊滅を掲げガザ地区で大規模な軍事攻撃を開始した。同年11月の約1週間の戦闘休止などで、人質154人が解放された。その後、イスラエル軍による地上作戦で8人の人質が生還、30人以上が遺体で回収された。

米国、カタール、エジプトが仲介するイスラエルとハマスの停戦交渉は、ガザ地区にイスラエル軍を駐留させると主張するイスラエルと、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退と恒久的停戦を一貫して要求し続けるハマスとの溝が埋まらないまま平行線をたどっていた。

停戦交渉が行き詰まる中、トランプ次期米政権の中東問題担当特使を務める予定のウィトコフ氏が先駆けて、今年1月10日にカタールを訪問した。翌11日には、イスラエルを訪問しネタニヤフ首相と会談。トランプ氏の大統領就任日の20日までに停戦合意を成立させるよう伝えた。トランプ氏は、大統領就任までにハマスが人質を解放しなければ、「地獄の報い」を受けるだろうと警告していた。ネタニヤフ氏は対外情報機関モサドのバルネア長官らを仲介国カタールに派遣。イスラエルとハマスは15日、人質の解放と停戦で合意した。

停戦合意の第1段階では、6週間にわたり、ハマスがガザ地区で拘束しているイスラエル人の人質のうち、女性、子供、高齢者、傷病者など33人を解放し、イスラエル側は収監するパレスチナ人囚人約1900人を釈放する。第2段階では、残る人質の解放、イスラエル軍の完全撤退、恒久的な停戦を実現するとしている。最終の第3段階では、人質の遺体の返還、ガザ地区の復興が予定されている。

停戦が発効した19日、ハマスは人質のイスラエル人女性3人を解放。イスラエル側は20日未明、収監していた女性や少年のパレスチナ人囚人90人を釈放した。ハマスは25日、2度目の人質解放を行い、拘束していたイスラエル女性兵士4人を解放。イスラエル側は、終身刑に服していた凶悪な犯罪者121人を含む囚人200人を釈放した。うち70人は、停戦合意に基づきエジプトに追放され、その後カタールに移動した。

シンクタンク、エルサレム安全保障外交センターの上級アナリスト、ヨニ・ベンメナヘム氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、ハマスは昨年12月、ガザ地区に搬入された人道支援物資を売りさばいて得た資金を使って4000人の新たな戦闘員を募集し、勢力を増強したと指摘する。ベンメナヘム氏によると、イスラエル軍は過去1年4カ月近くにわたり、ガザ地区でハマスの24大隊を解体し、ハマス軍事部門の戦闘員2万~2万5000人を殺害した。しかし、軍はレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと戦っていた3カ月間に、南レバノンに多くの部隊を移送。ハマスへの圧力を緩めたことで、ハマスに再建の機会を与えてしまったという。

イスラエル治安当局の推定によると、ガザ地区にはまだ約2万5000人のハマス戦闘員が潜んでいる。停戦合意によって、毎日600台の人道支援物資を載せたトラックがガザ地区に入ってきている。ベンメナヘム氏は、「ハマスは支援物資で得た資金を使ってさらに戦闘員を募るだろう。これまで同様、停戦期間に軍事力を増強し、ガザ地区の支配を維持する可能性がある」と警鐘を鳴らす。

ネタニヤフ氏は18日、テレビ演説で、「停戦は一時的で、トランプ氏から必要に応じて戦闘を再開する権利の支持を得た」と強調。ハマスが停戦合意に違反した場合、ガザ地区で戦闘が再開される可能性がある。

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