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レバノン停戦終了間近 イスラエル軍、駐留続行か

南レバノンでイスラエル軍が押収したヒズボラの武器。 イスラエル軍基地で公開された=2024年10月23日(UPI)

イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦終了の期日が間近に迫っている。イスラエル軍は、レバノン南部でヒズボラの隠された軍事インフラの発見を続けている。(エルサレム森田貴裕)

昨年11月27日に発効したイスラエルとヒズボラの60日間の停戦合意は、1月27日に終了する。米中央軍の合同作戦センターとイスラエル軍が今回の停戦を監視してきた。ヒズボラの停戦違反が見つかった場合、イスラエル軍はレバノン軍に24時間以内に対処するよう命じる。解決しない場合は、イスラエル軍が空爆または地上部隊で介入。ただし、差し迫った脅威に対しては、調整なしで迅速な行動が促されるとしている。

イスラエル防衛・安全保障フォーラム(IDSF)の創設者兼会長のアミル・アビビ准将(退役)は、イスラエルのメディア「ILTV」で、停戦終了の期日が近づく中、イスラエル軍のレバノンからの撤収について、「レバノン軍がレバノン南部のヒズボラを追い出さなければ、イスラエル軍部隊はイスラエル国民を守るためにそのまま駐留することになる」と語った。アビビ氏は、「停戦開始後、これまでにイスラエル軍はレバノン南部でヒズボラの工作員40人以上を殺害した」と述べ、ヒズボラが勢力の立て直しを図っていると指摘した。

停戦合意では、レバノン軍が南部に展開し、60日間の移行期間にヒズボラは国境から約30㌔北のリタニ川以北へ撤退。イスラエル軍はレバノン南部から部隊を段階的に撤収することなどが盛り込まれた。アビビ氏は、「合意の実現はレバノン国家の責任で、実行するのはレバノン軍の責任だ」と強調した。

昨年10月に開始されたイスラエル軍によるレバノン南部への侵攻作戦で、レバノン南部にあるヒズボラの軍事インフラの規模が明らかになった。イスラム教シーア派の村々には、大量の武器やロケットランチャーが収容され、ヒズボラの精鋭部隊ラドワン部隊の基地として機能していた。ラドワン部隊は、イスラエル北部の国境近くの小さな町やコミュニティーへの攻撃を計画。イスラエルへの攻撃準備のために、地下トンネルではなく草木が密生した場所に武器を隠し保管していた。

イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、ヒズボラが計画通りにイスラエルへの侵攻を2023年10月に開始していたら、ハマスによる10月7日の攻撃を上回る壊滅的な被害をもたらした可能性があったと分析する。イスラエル軍部隊は、現在もレバノン南部で武器庫や地下トンネルなど、ヒズボラの隠された軍事インフラの発見を続けている。

レバノン国民議会で1月9日、新しい大統領に軍司令官のジョセフ・アウン氏が選出された。レバノンでは前大統領が2022年10月に離任して以降、各派の調整が難航し、大統領の空席が続いていた。ヒズボラは弱体化しているが、国政を妨害する能力は依然として保持しており、レバノン軍がヒズボラ拠点に展開し始めている。ミカティ暫定首相は1月10日、ヒズボラの武装解除を開始したと発表した。

イスラエルのサール外相は、レバノン新大統領を歓迎する声明を出し、「レバノンのより良い未来と隣国との良好な関係につながることを望む」と述べた。一方、イスラエルに敵対するイランのペゼシュキアン大統領は、「イラン政府はあらゆる分野で2国間協力を強化し続ける用意がある」と表明。「レバノンの安定と団結強化が、レバノン領土におけるイスラエルの野望を阻止することになる」と強調した。

イスラエル軍は、米中央軍に「レバノン軍が義務を果たし、ヒズボラの軍事インフラが解体されない限り、レバノン南部から撤収しない」と通知した。米中央軍のジェファーズ司令官は、レバノン当局に対し、「イスラエル軍の撤収はレバノン軍の断固たる行動に懸かっている」と強調した。レバノンのメディアによると、イスラエルはヒズボラ復活を阻止するため、米中央軍からレバノン南部の主要地域にイスラエル軍部隊の駐留を続けることの承認を得たという。

イスラエルの安全保障内閣閣僚筋は、レバノンにはイスラエル軍部隊が数年間撤収する予定のない地域があることを強調している。60日間の移行期限が過ぎた後も、イスラエル軍がレバノン南部に駐留を続ける可能性がある。

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