トップ国際中東長距離攻撃の応酬激化 イスラエル、テロ組織指導者標的

長距離攻撃の応酬激化 イスラエル、テロ組織指導者標的

日、イスラエル軍の空爆を受けてイエメンの首都サヌアの空港から上がる煙(EPA 時事)

イスラエル軍は12月26日、イエメンの首都サヌアにある国際空港など親イラン武装組織フーシ派の拠点に空爆を実施した。一方のフーシ派は、イスラエルに向けて弾道ミサイルの発射を続け、その頻度を増しており、双方の攻撃の応酬が激しくなっている。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍による26日のフーシ派に対する作戦では、空中給油機を伴った戦闘機25機が約1500㌔離れたフーシ派の拠点に空爆を実施した。サヌア国際空港が初めて標的となり、管制塔や滑走路、出発ロビーが破壊された。さらに、これまでの作戦と同様に、紅海沿いの主要港であるホデイダ港および周辺の二つの港などが標的となり、複数の発電所や石油ターミナルが破壊された。軍は、フーシ派がテロ目的で民間インフラを軍事的に利用していると主張している。

今回のイエメンへのイスラエル軍による空爆は、フーシ派指導者のテレビ演説中に行われた。イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、演説に合わせてフーシ派政権のシンボルであるサヌア国際空港やホデイダ港、アジズ発電所を攻撃することによって政権の威信を低下させ、政権に対する国民の信頼を損なわせ、政権の存続を脅かすような事態につながることを狙う計画的なものだったと分析する。

ホデイダ港は、イランから密輸入される武器、弾道ミサイルの大型部品、大型ドローン、その他のミサイルシステムの主要拠点となっているという。サヌア国際空港は、民間の大型貨物機でミサイルやドローンの部品、ロケット燃料や爆発物の原料を密輸入するには不可欠だった。フーシ派は、民間の港や国際空港を利用することで、イランからの武器密輸を追跡する米、英、イスラエルの情報機関による監視を逃れることができた。

ミサイルの組み立てや諜報(ちょうほう)活動などフーシ派への支援を行うイラン革命防衛隊の教官や、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの工作員は、主にサヌア国際空港からイエメンに入国していたという。また、発電所への攻撃は、武器の生産、ミサイルやドローンの部品の組み立てに直接影響する。

イスラエルのネタニヤフ首相は26日、イエメン攻撃後のビデオ声明で、「われわれは、イランの悪の枢軸からこのテロ組織を断ち切る決意を固めた」として、「任務を完了するまで攻撃を続け、指導者らを追い詰める」と警告した。カッツ国防相も、「われわれは、フーシ派の指導者全員を追い詰める。長距離であってもイスラエルの攻撃範囲から逃れられる者はいない」として、指導者を標的とすることを強調した。

イスラエルは、パレスチナ自治区ガザを実効支配していたイスラム組織ハマスによる2023年10月のイスラエル急襲で始まった戦争で、ハマス指導者を標的に軍事作戦を展開し、最高指導者らを殺害。ハマス壊滅と人質の帰還に向け圧力をかけ続けている。また、ハマスに連帯を示しイスラエルへの攻撃を続けたヒズボラの最高指導者をも標的に攻撃を行い、イスラエルに敵対するイランの代理勢力を弱体化させた。ただ、ハマスやヒズボラへの攻撃と異なる点は、イスラエルと隣接するテロ組織ではなく、遠く離れた国の熟練したテロ組織を標的としていることだ。

フーシ派によるイスラエルへのミサイルやドローンを使った攻撃は12月、頻度を増した。イスラエル軍の防空システムや空軍機が迎撃しているが、テルアビブ近郊にフーシ派のミサイル弾頭が落下し、学校校舎に被害が出ている。フーシ派は、イスラエルによる大規模な報復攻撃を受けた後も、イスラエルがガザ地区での軍事作戦を停止するまで攻撃を続けると宣言した。

イランは、ガザ地区で完全停戦が合意されるまで、代理勢力のフーシ派に武器や軍事装備の供給だけでなく、イスラエルへの攻撃を継続するよう指示を出し続けるとみられ、フーシ派とイスラエルの攻撃の応酬は、今後も続く可能性がある。

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