Home国際中東ハマス急襲400日 人質解放交渉進まず イスラエルは強硬姿勢

ハマス急襲400日 人質解放交渉進まず イスラエルは強硬姿勢

イスラエルのネタニヤフ首相(左から2人目)と ガラント国防相(当時、左端)=10月28日、エル サレム(AFP時事)
イスラム組織ハマスによる昨年10月のイスラエル急襲で始まった戦争は400日が経過した。ハマスの壊滅を目指すイスラエルは、依然としてパレスチナ自治区ガザで軍事作戦を続けているほか、レバノン南部でも攻撃を強めている。ネタニヤフ首相は、ハマスへの対応を巡って対立していた国防相を解任し、強硬姿勢を貫く構えだ。(エルサレム森田貴裕)

昨年10月7日、ハマスは大量のロケット弾をイスラエルに撃ち込んだほか、陸海空から戦闘員をイスラエル南部に送り込み、前代未聞の急襲を行った。ハマスは、約1200人のイスラエル人を殺害し、250人以上を人質に取ったが、その多くは民間人だった。これに対しイスラエルは、ガザ地区で大規模な軍事攻撃を開始した。ガザ保健当局によれば、これまでにガザ地区でのイスラエル軍による攻撃で、4万3000人以上が死亡した。ハマスが発表する死亡者数には戦闘員も含まれている。

戦争が始まって以来、人質154人が解放されたが、そのほとんどは昨年11月の約1週間の戦闘休止によるものだ。イスラエル軍による地上作戦で8人の人質が生還、30人以上が遺体で回収された。残りの人質の多くは地下深くにあるハマスのトンネル内で拘束されているとみられ、少なくとも30人が死亡したと推定されている。

ネタニヤフ氏は、ハマスとの戦いでの完全な勝利を誓い、ガザ地区にイスラエル軍を駐留させると主張している。一方のハマスは、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退と恒久的停戦を一貫して要求し続けている。双方がそれぞれの主張を譲らず、交渉は平行線をたどってきた。10月中旬にイスラエル軍がハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したことで、人質解放交渉を進めるきっかけになる可能性があると考えられていたが、1カ月が経過した今も、何も変わっていない。

ネタニヤフ氏は11月初旬、ハマスへの対応を巡って対立していたガラント前国防相を解任し、後任に強硬派でネタニヤフ氏の右腕であるカッツ前外相を起用した。外相の後任には9月下旬に連立政権に復帰した右派政党「新たな希望」のサール党首を充てた。ネタニヤフ氏は政府内にいた最後の反対勢力を実質的に排除した。

イスラエルのメディアによれば、ガラント氏は7月にハマスとの人質解放交渉について「条件が整った」と人質の家族に話し、ネタニヤフ氏に合意するよう説得を試みたという。ガラント氏は解任前、人質の家族に対し「イスラエル軍がガザ地区でできることはもう何もない」と語っていた。イスラエルがハマスと合意し、ガザ地区からイスラエル軍が撤収すれば、ハマスが権力を維持することになる。ハマスの壊滅を目指すイスラエルは、ハマスが降伏し人質全員が帰還するまで、ガザ地区への軍事的圧力の継続を表明している。

イスラエル軍報道官のピーター・ラーナー中佐は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、進行中のガザ地区での作戦によって、ハマスの軍事力と統治能力は崩壊しているが、人質の帰還が重要な目標であって、戦争はまだ終わっていないと指摘する。イスラエル軍は現在、ガザ地区北部、中央部のネツァリム回廊、エジプトとの国境地帯にあるフィラデルフィ回廊で、ハマス戦闘員の再編成を阻止するために作戦を継続しているという。

また、イスラエル軍は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻撃を続けている。ハマスに連帯するヒズボラの攻撃により、1年以上も家を離れて暮らすイスラエル北部6万人を帰還させるため作戦を継続するという。レバノン保健当局によれば、これまでに3000人以上が死亡した。ヒズボラは当初、イスラエルに毎日数千発のロケット弾発射を計画していたとみられるが、現状では1日に約150発が発射されている。イスラエル側では、ヒズボラによる攻撃で、兵士31人を含む少なくとも76人が死亡した。

来年1月のトランプ次期米大統領就任式に先立ち、イスラエルが戦争を終結させる可能性があると報じられている。ただ、イスラエルがハマスに譲歩する可能性は極めて低く、問題解決に向けトランプ氏の手腕が注目される。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »