Home国際中東ハマス、最高指導者殺害も抗戦主張 イスラエルはガザ攻撃継続

ハマス、最高指導者殺害も抗戦主張 イスラエルはガザ攻撃継続

イスラム組織ハマスの壊滅を掲げるイスラエルのネタニヤフ首相は17日、ハマス最高指導者シンワル氏を殺害したと発表した。ガラント国防相はハマスに対し、人質を解放して降伏するよう呼び掛けた。一方のハマスは、徹底抗戦の構えだ。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍は16日、ガザ地区南部ラファで通常の対テロ掃討作戦を実施していた。地上部隊は、建物の間を移動している不審なテロリスト3人を発見し発砲。その後、爆弾が仕掛けられていた建物に逃げ込んだテロリストらを銃撃や砲撃で殺害した。翌17日、部隊がその建物内に入り、偶然にもシンワル容疑者らしき遺体を発見。DNA検査を経てシンワル氏だと確認した。シンワル氏は、昨年10月のイスラエル奇襲の首謀者とされる。ハマスの最高指導者ハニヤ氏が今年7月末にイラン首都テヘランで殺害された後、最高指導者に選出されたばかりだった。イスラエルのガラント国防相は声明で、ハマス戦闘員らに対し、「人質を解放し手を上げて投降する時が来た」と述べ、ハマスに降伏するよう呼び掛けた。

ネタニヤフ氏は17日夜のビデオ声明で、イスラエル軍によるシンワル氏殺害を称賛。ガザ地区で拘束されている人質の家族に対し、「人質の帰還まで全力で戦い続けることがわれわれの最大義務だ」と述べ、ガザ地区への攻撃継続を表明した。一方で、ガザ地区の人々へのメッセージとして、「ハマスが武器を捨て人質を解放するならば、この戦争は明日にも終わる可能性がある」と述べ、人質を拘束するハマスのメンバーに対し、武器を捨て人質を解放するよう呼び掛けた。

一方、カタールの首都ドーハに拠点を置くハマス政治局の副代表ハイヤ氏は18日のビデオ声明で、「シンワル氏の殺害は抗戦の原動力となって、占領者(イスラエル)はすぐに後悔することになるだろう」と述べた上で、シンワル氏の死を悼み、「パレスチナ解放」まで徹底抗戦を続けると表明した。さらに、ガザ地区で拘束する人質について、「イスラエル軍がガザ地区への攻撃を止(や)めて撤退しない限り、人質の解放はない」と断言した。報道では、ハマスはシンワル氏の後任にハイヤ氏を指名する可能性が高いと伝えられている。

ハマスを長年支援してきたイランのペゼシュキアン大統領は、シンワル氏を「最後まで勇敢に戦った英雄」と称賛。反イスラエル闘争の継続を訴えた。イランの最高指導者ハメネイ師も声明で、シンワル氏の死亡は「痛手だが、抵抗戦線はこれまで指導者の死後も前進を止めなかった。これからも止むことはない」と表明した。

昨年10月のハマスによるイスラエル奇襲の後、ハマスに連帯を示しイスラエルへの攻撃を続けているレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンの親イラン武装組織フーシ派は、シンワル氏を追悼する声明を出し、対イスラエル攻撃を継続すると宣言した。

イスラエルの国内治安機関シャバク(シンベト)の元職員で退役大佐のアミット・アッサ氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「時間が経過すれば人質の解放を見ることになるだろう」と予想する。アッサ氏によれば、ガザ地区の人々は、ハマスが終焉(しゅうえん)を迎えていることに気づいており、人質の拘束を続けることにメリットはない。人質は1カ所に拘束されているのではなく、ガザ地区中に散らばっており、その多くはハマスとつながりのある民間人家族の保護下にあるとされている。ハマスの指導者がいない今、これらの家族は、自分たちの身の安全を優先する可能性が高く、イスラエルの情報機関に徐々に連絡を取り、恩赦と引き換えに人質の引き渡しを申し出るだろうとの見方を示した。アッサ氏は、人質を巡る交渉が再開される可能性が高いとしつつも、「交渉する相手が出現するまで待つ必要があり見守るしかない」と指摘した。

ネタニヤフ氏は、ガザ地区で人質101人を拘束するハマスのメンバーらテロリストに対し、武器を置いて人質を返せば、命は奪わないとし、さらに人質を解放するすべての人の安全を保証すると表明している。ただ、イスラエルはシンワル氏の殺害後も、ガザ地区への攻撃の手を緩めていない。

ハマスは抗戦の姿勢を示しており、イスラエルにとってシンワル氏の殺害はハマス壊滅と人質帰還に向かう通過点にすぎず、戦争終結までまだ時間がかかりそうだ。

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