【エルサレム森田貴裕】パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスは31日、最高指導者ハニヤ氏がイランの首都テヘランで殺害されたと発表した。市内の滞在先で「裏切り者のシオニスト(イスラエル)による攻撃」で殺害されたと主張、イスラエルによる暗殺との見方を示した。
ハニヤ氏は、30日に行われたイランのペゼシュキアン新大統領の就任式に出席するためテヘランを訪問し、同国の最高指導者ハメネイ師とも会談していた。
イランの精鋭部隊である革命防衛隊の声明によれば、ハニヤ氏の護衛1人も死亡したという。
ハマス幹部は、暗殺は卑怯(ひきょう)な行為であり「対応なしでは済まされない」と報復を宣言。ガザ地区でのイスラエルとハマスの停戦交渉に影響を及ぼすのは必至だ。イスラエル軍報道官は、ハニヤ氏殺害に関するコメントを控えている。
米メディアによると、イランの最高国家安全保障会議がハニヤ氏の暗殺について協議した。同国の革命防衛隊で対外工作を担う「コッズ部隊」の上級司令官も参加したという。イスラエルに対する報復措置を検討しているとみられる。
ハニヤ氏は1962年ガザ市近郊のシャティ難民キャンプ生まれ。87年に始まった第1次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)に参加。パレスチナ評議会(議会)選でハマスが勝利した2006年、自治政府の首相を務めた。17年、ハマスの最高指導者に就任。19年にガザ地区を離れ、カタールを本拠に亡命生活を送っていた。今年4月、ガザ地区でのイスラエル軍による空爆では、ハニヤ氏の息子3人と孫4人が死亡していた。
イスラエルのネタニヤフ首相は昨年11月、対外情報機関モサドに対して、「ハマス幹部がどこにいても、狙うよう指示した」と、ガザ地区以外でも暗殺作戦を行う意向を示していた。