
【エルサレム森田貴裕】イスラエル軍は20日、イエメン西部ホデイダ港の周辺にある親イラン武装組織フーシ派の軍事目標を空爆したと発表した。ここ数カ月間のフーシ派によるイスラエルへの数百回に及ぶ攻撃に対する報復だとしている。イスラエルのメディアによると、同軍がイエメンを空爆したのは初めて。
これに対しフーシ派は21日、報復として、イスラエル最南端の都市エイラートに向けて弾道ミサイルを発射した。イスラエル軍は同日、同軍の防空システムが迎撃したと発表した。フーシ派は、今後もパレスチナ人と連帯してイスラエルへの攻撃を続けるとしており、報復の応酬が激化し、中東情勢が一段と不安定化する恐れがある。
イスラエル軍によると、フーシ派は、昨年10月にパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘を開始して以降、イスラエルに向けてドローンや弾道ミサイルなど220機・発以上を発射した。また、商都テルアビブでは今月19日のフーシ派によるドローン攻撃で、民間人に死傷者が出たばかりだった。軍によれば、ホデイダ港はイラン製の武器密輸に利用されているという。
イスラエルのネタニヤフ首相は20日、テレビで声明を発表し、フーシ派への攻撃について「イスラエルの手が届かない場所はない」と強調。「われわれに危害を加える者は誰であれ重い代償を払うことになる」と警告した。ガラント国防相は、ビデオ声明で、「フーシ派がイスラエル国民に初めて危害を加えたため攻撃した。必要であればいかなる場所でも攻撃する」と述べた。
またイスラエルの指導者らは、今回の攻撃について、フーシ派を支援するイランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを含むイラン代理勢力に対するメッセージでもあると指摘している。報道によると、イスラエルは米国に事前に今回の空爆を伝えていたという。
中東のメディアは、イスラエル軍による港の燃料の貯蔵タンクや発電所などを標的とした空爆で、6人が死亡、80人が負傷したと報じた。
フーシ派はまた、昨年11月以降、紅海を航行する船舶への攻撃を続けてきた。米英軍などはフーシ派の拠点を繰り返し空爆しているが、空爆後もフーシ派による攻撃はやんでいない。