トップ国際中東改革派大統領、変革は期待薄 経済の活性化が最大課題―イラン

改革派大統領、変革は期待薄 経済の活性化が最大課題―イラン

イラン改革派のペゼシュキアン元保健相3日、テヘラン(EPA時事)
イラン改革派のペゼシュキアン元保健相3日、テヘラン(EPA時事)

【ウィーン小川敏】5日実施されたイラン大統領選挙の決選投票で改革派の医師、ぺゼシュキアン元保健相が保守強硬派のジャリリ元最高安全保障委員会事務局長に10ポイント余りの大差をつけて当選した。改革派大統領の誕生でイラン民主化への期待の声も聞かれるが、イランの実権は最高指導者ハメネイ師(85)が掌握している点では変わらず、大きな変革は期待薄という見方が支配的だ。

新大統領は停滞する国民経済の活性化を最大の課題に掲げる一方、言論の自由、インターネットの規制緩和、女性へのスカーフ着用義務の一部緩和を実施したい意向といわれる。同時に、対欧米社会との関係改善にも力を入れ、核開発問題では国際原子力機関(IAEA)との協力再開などを通じて、制裁の緩和を目指すものと受け取られている。

ぺゼシュキアン氏が大差で当選した背景には、国民が刷新を期待し、特に若者が同氏に投票した結果と受け取られている。

ライシ前大統領時代に精鋭部隊「イラン革命防衛隊」が力を付け、強硬路線を展開してきた。22歳のクルド系女性のマーサー・アミニさんが2022年9月、イスラムの教えに基づいて正しくヒジャブを着用していなかったという理由で風紀警察に拘束され、病院で死亡したことが報じられると、イラン全土で女性の権利などを要求する抗議デモが広がった。それに対し、治安部隊が動員され、強権でデモ参加者を鎮圧してきた。その強硬政策の張本人がライシ師だった。政府と国民の関係は険悪化していった。大統領選の第1回投票の投票率は約40%と過去最低を記録するなど、多くの国民は政治に距離を置いてきた。

オーストリア国営放送(ORF)のイラン担当特派員カタリーナ・ワーグナー氏は「イランの実権は大統領ではなく、ハメネイ師が掌握している。イランのイスラム支配体制を揺るがす動きがあった場合、政府は弾圧に出てくるだろう。その上、新大統領は改革派だが、同時にハメネイ師に対しては忠実な政治家だ。ハメネイ師の意向に反して改革を実施することはできない」と分析した。

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