トップ国際中東イスラエル 戦闘終結へ新提案 依然大きな隔たり

イスラエル 戦闘終結へ新提案 依然大きな隔たり

恒久的停戦求めるハマス 

29日、イスラエル南部のパレスチナ自治区ガザとの境界 付近で作戦に当たるイスラエル軍戦車(AFP時事)
バイデン米大統領が5月31日、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争を終結させるための新たなイスラエル案を発表し、ハマスに受け入れるよう呼び掛けた。ハマスはこの提案を「前向きに検討する」としているもののこれまで交渉の前提として恒久的停戦を強く要求し続けており、ハマス壊滅を目指すイスラエルとの隔たりは依然として大きいままだ。(エルサレム森田貴裕)

イスラエルが提案したとされる新たな案は3段階から成る。

第1段階では6週間の「完全な戦闘休止」期間中にイスラエル軍がガザ地区の人口密集地から撤収し、イスラエルが収監するパレスチナ囚人数百人と引き換えにハマス側が女性や高齢者、負傷者など多数の人質を解放する。米国籍を持つ人質はこの段階で解放されるという。また、死亡した人質の遺体は家族の元に返還される。避難しているガザ地区の民間人は居住地域に帰還させ、これまで以上に支援物資が届くよう人道支援の拡大も進める。

第2段階では、イスラエルとハマスの恒久的な敵対行為の停止を実現し、ハマスはさらに男性兵士を含む残りの人質全員を解放。イスラエル軍はガザ地区から撤収する。第3段階で殺害された人質の遺体が返還される。また、ガザ地区の大規模な復興計画も開始される。

バイデン氏によると、この一時停戦は永続的なものになるが、ハマスが合意を破ればイスラエル軍は戦闘を再開できるという。

これまでハマスは交渉の前提条件として、恒久的停戦やガザ地区からのイスラエル軍の完全撤収などを要求。イスラエルはハマスの要求には応じない姿勢で、双方がそれぞれの主張を譲らず、交渉は平行線をたどってきた。

ハマスは31日、声明を出し、バイデン氏が言及した新たな提案について「イスラエルが新たな案を実行すると明確に表明するなら、恒久的停戦やイスラエル軍のガザ地区からの完全撤収、避難住民の帰還などに基づく提案に、積極的かつ建設的に応じる用意がある」と述べた。ハマスは、治安関連でイスラエル国内の刑務所に収監されているパレスチナ人囚人の釈放と引き換えにガザ地区で拘束している人質全員を解放するとしている。ただ、戦闘休止後にイスラエルがガザ地区への軍事攻撃を再開しない保証を求めている。

これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は6月1日の声明で、「イスラエルの戦争終結の条件に変更はない」と発表。ハマスの軍事力と統治能力の破壊、人質全員の解放、ガザ地区がイスラエルの脅威とならなくなることの条件が満たされるまでガザ地区での「恒久的停戦」はあり得ないと強調した。

国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ・ハーグ)が5月24日にイスラエルに対し、ガザ地区最南部ラファでの軍事作戦即時停止を命じる暫定措置を出した。イスラエルはこれに反発し、戦闘の継続を主張した。イスラエル軍は人質奪還のためハマス最後の拠点となったラファでの標的を絞った地上作戦をさらに拡大させている。

一方のハマスは26日にラファからイスラエルのテルアビブに向けロケット弾8発を発射。数カ月ぶりに空襲警報が鳴り響き、イスラエル軍の防空システムが迎撃した。イスラエルの国家安全保障研究所(INSS)およびミスガブ研究所の上級研究員であるコビ・マイケル教授は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、ラファには多くの地下トンネルがあり、ハマスの4大隊が残っていると推定。ハマスはまだ長距離ミサイル数十発と短距離ロケット弾数百発を保有しており、イスラエル軍に押収される前にテルアビブなどに向けて発射する恐れがあると説明した。

ネタニヤフ氏の側近であるハネグビ国家安全保障顧問は29日、ハマスを完全に壊滅させるには少なくともあと7カ月の期間が必要との見方を示した。残る人質121人が、約10年間拘束されている他の4人と共にガザ地区で拘束されている。イスラエル軍によれば、うち39人は既に殺害されたという。

ハマスが戦闘休止と人質解放に向けた交渉でイスラエルと合意に到達しなければ、今後もガザ地区で民間人の犠牲者がさらに増えることは必至だ。

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