【エルサレム森田貴裕】イスラエルを訪問したブリンケン米国務長官は9日、ネタニヤフ首相らとの会談後の記者会見で、パレスチナ自治区ガザ北部への住民帰還に向け、国連の調査団が現地調査を行うことで合意したと明らかにした。
ブリンケン氏は会見で、イスラム組織ハマスに対するイスラエルの軍事作戦について、ガザ地区北部では作戦を縮小する段階に移行していると指摘。その上で、「状況が許せば住民が速やかに帰還できるようにしなければならない。ガザ地区からの退去を強いられるべきではない」と語った。ただ、「これは一夜にして実現できるものではない。安全やインフラ、人道面など深刻な課題がある」と述べ、帰還開始には時間が必要との見方を示した。
ブリンケン氏は、住民をガザ地区外へ強制移住させる案に米政府として明確に反対する意思を示し、ネタニヤフ氏に強制移住がイスラエル政府の政策ではないことを再確認したという。
イスラエル軍は10日、ガザ地区南部ハンユニスや中部マガジ難民キャンプで攻勢を強め、過去1日でハマスの拠点や戦闘員など150カ所以上を標的に空爆などを行い、多くの戦闘員を殺害したと発表した。
ガザ保健省は10日、交戦が始まった10月7日以降、ガザ地区での死者数は2万3357人に上ると発表した。
一方、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは9日、イスラエル北部にあるイスラエル軍施設を無人機で攻撃したと発表。ハマス指導者やヒズボラ司令官の殺害への報復だと主張した。
これに対し、イスラエル軍は9日夜、レバノン南部にあるヒズボラの軍事拠点を標的に空爆などを行った。ヒズボラによると、イスラエル軍による攻撃でこれまでに戦闘員計159人が死亡したという。