テロ組織ハマスの撲滅を掲げるハマスのリーダーの息子は、10月7日の奇襲攻撃の際のハマスの残虐行為には驚かなかったが、その攻撃の規模には驚いたと語った。
<前回>【連載】ハマス掃討へ―試練のイスラエル(3) SNS虚偽情報 激化する戦時プロパガンダ
多くの国がイスラエルが誇るインテリジェンスの機能、情報分析力を削(そ)がれた現実に驚愕(きょうがく)しただろう。台湾当局筋によると、自国のインテリジェンス強化についての見直しを余儀なくされているという。
匿名を条件でイスラエル国防軍(IDF)スタッフは「ハマスの奇襲攻撃のシナリオは、分厚いマニュアルに驚くほど用意周到に練られていた」と語った。今回のハマスのイスラエル国家殲滅(せんめつ)への本気度を示すのと同時に、作戦能力を証明したことにほかならない。
停戦を望む人々の多くは彼らの本当の動機が分かっていない。今すぐハマスを撲滅しなければ、さらなる暴力につながることは間違いない。ハマスは過去これまで交渉した4回の停戦合意をすべて破った。亡くなった市民を意図的に世界に見せ、ミサイル発射を選択し、イスラエル軍の退避警告のビラを無視するように放送した。
ハマスのスポークスマンは「人々が自分の家を守るために、イスラエルの戦闘機に対して自らを犠牲にすることを厭(いと)わない事実は、この戦略がそれ自体を証明している。ハマスは人々にこの戦略を採用するよう呼び掛ける」と語った。ハマスが占拠するテレビ局は子供向け番組で子供を登場させ、子供たちにまで戦争に参加してユダヤ人を殺す内容の会話をさせている。実際のところ、戦争を望んでいるのはハマス側だ。
イスラエルが何もしなければ、災難は続く。反撃すれば非難される。つまりどちらにしてもユダヤ人にとってマイナスのイメージは付きまとう。つまるところ、反ユダヤ主義の動きがあるのだろう。紛争、テロ攻撃などの事態に向けて安保理決議の策定を担うはずの国連の事務総長が、テロ組織ハマスによる攻撃について「何もないところから突然起きたわけではない」と発言したのは、知見の欠落なのか意図的なものなのか。
今回の衝突で多くのイスラム教徒が亡くなったことに憤慨するのなら、深刻な内紛でこれまで死んだイスラム教徒についてなぜ黙秘しているのだろう。つい先日、「イスラム国」(IS)のジハード主義者が非武装のイラク人を数百人射殺したことについて、なぜ黙秘しているのだろう。
本当に子供たちへの暴力を心配しているのなら、ナイジェリアで何百人も女子生徒を誘拐して奴隷にしたボコ・ハラムになぜ抗議しないのだろう。イスラム教徒がパキスタン、アフガニスタン、ソマリア、リビア、イエメン、イラク、シリアで何万人ものイスラム教徒を殺害している。
西側諸国では昔ながらのユダヤ人への憎しみが、今日では大量移民によってもたらされている。フランスではアラブ人暴徒がユダヤ人商店を略奪し、焼き払い、シナゴーグを襲撃した。ドイツでもオーストラリアでもベルギーでも、デモ隊が反ユダヤ主義的なスローガンを叫び、イマームの指導でイスラム教徒がユダヤ人を銃殺し、ユダヤ人記者を罵倒している。
イスラエルが残酷なのではない。ユダヤ人が自分自身と自分たちの国を守るためにあえて立ち向かっている。今、国際世論はガザ地域の人道、人権を懸念し、しきりに停戦と救援物資の調達について叫んでいるが、これこそがハマスの手口だ。子供を含む多くの人質とガザ市民はハマスの手の中にあるからだ。
(仏国立安全保障防衛研究センター上席フェロー・新田容子)
=おわり=