
【エルサレム森田貴裕】イスラエル軍は5日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスへの空爆や地上部隊による攻撃を強化し、ガザ地区を南北に分断したことを明らかにした。ハマスが司令部を置いているとされる北部を南部と切り離すことで、ハマス掃討作戦に集中する狙いがある。ハマスとイスラエルの戦闘開始から7日で1カ月を迎えるが、収束の気配はない。
イスラエル軍報道官は5日夜、同軍地上部隊がガザ地区北部にある中心都市ガザ市を完全に包囲したと説明。ハマスへの激しい攻撃で、事実上、「ガザ地区を北部と南部に分断した」と強調した。報道官は「わが軍は、地上作戦をさらに強化している」と述べ、ガザ地区北部の住民に対して南部へ退避するよう繰り返し呼び掛けた。
イスラエル軍は6日、ガザ地区で過去24時間にハマスの軍事拠点450カ所以上を標的に攻撃を行い、空爆でハマスの特殊作戦司令官が死亡したと発表した。他にも、複数のハマス指揮官が死亡したという。同軍によると、対戦車誘導ミサイルやロケット弾の発射拠点、地下トンネルなどハマスの軍事施設を空爆するなどした。
ガザ保健当局によると、ガザ地区でのこれまでの死者数は9770人に上っている。イスラエル側もハマスの奇襲などで1400人以上が死亡。ガザに連れ去られた人質も約240人いる。
イスラエルのネタニヤフ首相は5日、南部の空軍基地を訪問し、兵士らを前に「人質の解放がなければ停戦はない。われわれは勝つまで戦い続ける」と述べ、ハマスへの攻撃を続行する考えを強調した。
一方、イスラエル北部では5日、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが発射した対戦車誘導ミサイルがイスラエル軍駐屯地に水を運ぶ車両に直撃し、民間人1人が死亡した。イスラエル軍は空爆や砲撃で応戦した。
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は5日、ヨルダン川西岸ラマラでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。アッバス氏はイスラエルの攻撃を「ジェノサイド(集団虐殺)」と呼んで非難し、「即時停戦」を求めた。