トップ国際中東挑発繰り返すヒズボラ イスラエル領内に前哨基地 防護壁の建設を妨害

挑発繰り返すヒズボラ イスラエル領内に前哨基地 防護壁の建設を妨害

イスラエル占領地のゴラン高原で、ロケット着弾を 受けて警戒に当たる兵士=4月9日(EPA時事)

レバノン南部のイスラエルとの国境沿いで、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエルに対し挑発行為を繰り返している。軍事衝突につながる可能性があり、イスラエルとヒズボラの間に緊張が高まっている。(エルサレム・森田貴裕)

イスラエル軍によると6日、レバノン南部からイスラエル北部に向けて対戦車ミサイルが発射され、ゴラン高原の元シリア領だったガジャル村近くの国境フェンスで爆発した。これに対し、イスラエル軍は応戦し、ミサイルが発射された地域に向けて砲撃を行った。また、イスラエル軍ラジオが報じたところによると、ヒズボラの工作員数人とレバノン軍兵士の約30人が5日、国境を越えてイスラエル領内に侵入し、約20分後に立ち去ったという。イスラエルは、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)に対し、この問題に対処するよう要請した。

ヒズボラは先月、ゴラン高原の国境から数十㍍離れたイスラエル領内のシェバ農場に前哨基地としてテント二つを設置した。ゴラン高原は1967年6月の第3次中東戦争(六日戦争)でイスラエルがシリアから占領したが、レバノン政府やヒズボラは、ゴラン高原に連なるシェバ農場はレバノンに属すると主張し、返還を求めている。イスラエルは国連を通じてテントの撤去を要請したが、一方のヒズボラはイスラエルに対しガジャル村からの撤退を要求した。イスラエルはヒズボラに対して前哨基地を直ちに撤去しなければ武力を行使すると警告。ヒズボラは二つのテントのうち一つを撤去させた。

今月12日には、ヒズボラの工作員が国境フェンスを破壊しようと近づいたり、別の場所ではイスラエル軍の監視塔に登り監視機器を奪ったという。14日には、多数のレバノン人が国境付近でデモを行い、国境フェンスに向けて投石するなどした。15日には、レバノンの国会議員を含むジャーナリストら約18人が国境を越えてイスラエル領内80メートルまで侵入。イスラエル軍は退去を拒否したジャーナリストらに威嚇射撃をするなどの暴動鎮圧手段を取り、レバノンに追い返した。これらの暴動や事件は、ヒズボラの扇動によるものとみられている。

イスラエルが2000年にレバノンから撤退した後、国連が引いた境界線(ブルーライン)によりガジャル村は南北に分割された。しかし、06年夏の第2次レバノン戦争以降、イスラエルは村全体を支配。国連は安全保障理事会決議の一環として、イスラエルに対し、村北部での建設工事を中止し軍隊を撤退させるよう求めてきたが実現していない。 村のアラブ系イスラエル住民は村北部のレバノン併合に反対している。

ヒズボラの指導者ナスララ師は今月12日、ガジャル村の周辺にコンクリートの壁を建設しているとしてイスラエルを非難。「この土地はイスラエルに渡すわけにはいかない」「イスラエルがわれわれに対して行動するなら、黙っていない」と述べた。

イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、ヒズボラの工作員が民間人を装ってガジャル村の防護壁の建設工事に抗議するデモなどを行い建設作業が進まないように妨害しているが、これはヒズボラの精鋭部隊ラドワン部隊の戦闘員がイスラエル領内に侵入し攻撃できるようにするためだと分析する。ヒズボラは過去に2度、脆弱(ぜいじゃく)な場所であるガジャル村からイスラエル領土内に戦闘員を送り込もうとして、2度とも失敗に終わっている。

イスラエルはレバノンとの国境に沿って防護壁を建設中だが作業は遅れている。防護壁が完成すれば、ヒズボラのイスラエル攻撃計画は完全に阻止される可能性が大きい。戦闘員がイスラエル領土内に突撃しようとする場合、防護壁を越えようとしている間、イスラエル軍は防御態勢を整え反撃を行うことができるという。

イスラエルは16日、ヒズボラに対し、国境沿いでの挑発が軍事衝突につながる可能性があると警告した。イランの支援を受けるヒズボラは、推定15万発のミサイルやロケット弾をイスラエルに向けているとされる。今のところ、イスラエル軍の大規模な部隊移動などは見られないが、戦争に発展した場合は、大規模交戦になる恐れがある。

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