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イスラエル軍とパレスチナ武装勢力 報復の連鎖が拡大 ヨルダン川西岸北部

紛争解決への糸口見えず

6月19日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェ ニンで、病院に運び込まれる負傷者(EPA時事)

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸北部で対テロ作戦を行うイスラエル軍とパレスチナ武装勢力との衝突が激しさを増し、報復の連鎖が拡大している。(エルサレム・森田貴裕)

ヨルダン川西岸北部ジェニンで6月19日朝、テロ容疑者2人を逮捕する作戦中のイスラエル軍とパレスチナ武装勢力との間で大規模な衝突が発生した。イスラエル軍によると、軍部隊の車両に仕掛けられた即席爆弾(IED)が爆発し、車両5台が損傷。立ち往生した軍部隊と武装集団との間で大規模な銃撃戦に発展したという。また、負傷者救出と部隊退避支援のため軍のヘリコプターが出動し武装集団に発砲、ミサイルを発射した。西岸地区でのヘリコプターによる攻撃は2002年以来。この衝突で、パレスチナ人5人が死亡、91人が負傷。イスラエル軍側も兵士8人が負傷した。パレスチナの武装組織「イスラム聖戦」が、イスラエル軍に対する攻撃の犯行声明を出した。

翌20日、パレスチナによる報復攻撃が起きた。西岸北部のユダヤ人入植地エリ近郊にあるガソリンスタンドやレストランで、男2人が銃を乱射し、イスラエル人4人が死亡、4人が負傷した。銃撃犯のうち1人はイスラエル市民の発砲で死亡、1人は車で逃走後にイスラエル軍特殊部隊の銃撃で死亡した。イスラム組織ハマスは、「ジェニンでのイスラエルの犯罪に対する報復だ」との声明を出した。

一方、エリ近郊での銃撃テロを受け、ユダヤ人過激派が20日夜から数日間、西岸北部ナブルス近郊などパレスチナの町や村を襲撃した。入植者ら数百人が車や住宅などに投石、放火、銃撃などを行い、パレスチナ人1人が死亡、数十人が負傷した。イスラエル警察は、ユダヤ人過激派4人を逮捕した。治安当局者によると、軍隊のほとんどが対テロ作戦に従事しており、ユダヤ人暴徒を止めることができなかったという。

21日には、パレスチナ武装勢力がジェニン北部にあるジャラメ検問所を銃撃した。これに対しイスラエル軍は銃撃を行った武装勢力が乗る車をドローン(無人機)で攻撃。銃撃犯3人全員が死亡した。3人のうち2人はイスラム聖戦のメンバーで、1人はパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ系の武装組織「アルアクサ殉教者旅団」のメンバーだった。軍によると、3人は他の銃撃事件にも関与していたという。西岸地区でのドローン攻撃は17年ぶりで、イスラエルのネタニヤフ首相は、今後もドローン攻撃を行うと警告した。

西岸北部ではここ1年以上にわたりイスラエル人を狙ったテロ攻撃が増え、軍へのIED攻撃も増加している。イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリスト、ロン・ベンイシャイ氏によると、最近のパレスチナ武装勢力が使用するIEDは性能が向上し強力になっており、イランの支援を受けるハマスやイスラム聖戦はソーシャルメディアを使い地元のテロ組織などパレスチナの若者に武器や資金を提供して勢力を拡大しているという。

イスラエルは、銃撃テロを理由に、入植地エリの住宅建設計画で1000戸を追加すると発表。26日にはエリを含む既存の入植地に5600戸以上の新たな住宅建設を承認したほか、無許可で建設された入植地3カ所の合法化も行った。1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領したヨルダン川西岸や東エルサレムにある入植地には、現在、約75万人のイスラエル人が住んでいる。国際社会は、イスラエルが占領地で進める入植活動は国際法違反と見なしている。

入植地の承認に反発するパレスチナ武装勢力は26日、ジェニンからロケット弾2発を発射した。負傷者は報告されていない。

イスラエルはパレスチナ自治政府に対し西岸北部における治安活動の協力を要請しているが、自治政府のアッバス議長は消極的だ。イスラエル軍は、ヨルダン川西岸の幹線道路や入植地を防衛するための部隊を増強。西岸北部の武装勢力を無力化するためドローンも配備した。

今後もパレスチナとイスラエルの報復の連鎖が続く可能性があり、紛争解決への糸口は見えないままだ。

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