トップ国際中東パレスチナ 主流派ファタハの支持率低下 ハマスとの対立が激化

パレスチナ 主流派ファタハの支持率低下 ハマスとの対立が激化

2国家共存は時代遅れ指摘も

パレスチナ自治区ガザで、ハマスの創設35年を祝う集会に参加した支持者=2022年12月14日(UPI)

エルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)で20日、イスラム組織ハマスとパレスチナ自治政府のアッバス議長が率いる主流派ファタハの支持者らの間で激しい衝突が起きた。パレスチナではファタハの支持率が低下し続けている。(エルサレム・森田貴裕)

衝突の動画はソーシャルメディアに投稿された。暴徒らは、パレスチナ過激派のムハンマド・ディフ氏が描かれ「真の解放の約束が近づいている」と書かれた横断幕を掲げていた。ディフ氏は、ハマスの軍事部門「イザディン・アルカッサム(カッサム旅団)」のリーダーで、過去にバス爆破を含む多くのテロ攻撃の計画や実行に関与したため、25年以上にわたってイスラエルの最重要指名手配リストのトップに載った人物だ。少なくとも7回のイスラエルによる暗殺未遂を生き延びた。昨年12月のハマス創設35周年記念では、声明を出し、全てのパレスチナ派閥に対し団結してパレスチナを解放するよう呼びかけている。

エルサレムの聖地では17日にも、ファタハの旗を掲げようとした若者が、ハマスの支持者に取り囲まれて、石やペットボトルを投げ付けられる事件が発生し、さらに前の週にも同様の事件が発生していた。

アナリストの多くは、これらの事件は自治政府とアッバス氏に向けられたパレスチナの人々の怒りを反映しており、深刻な問題だと分析する。

ヨルダン西岸地区とガザ地区で3月に実施された世論調査では、ファタハの支持率が低下し続けていることが示された。パレスチナ政策調査研究センターによると、調査対象者の82%が自治政府に汚職があると考えている。自治政府を支持しないと答えた人は63%で、アッバス氏の議長辞任を求めた人は78%という結果になった。

ファタハの民主改革派スポークスマンであるディリアニ氏は、ファタハの支持率低下についてアッバス氏を非難している。ディリアニ氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、2国家共存に基づいたファタハの政治綱領は時代遅れだと述べた。イスラエルの占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の拡大で、パレスチナはもはや主権国家として存続できるような連続した領土はなくなり、パレスチナの人々はファタハの政策には期待できないと見なしていると指摘する。

2005年にイスラエルがガザ地区から完全撤退した後、勢力を拡大したハマスは、06年の評議会(議会)選で大勝し第1党となった。 その後、パレスチナではファタハとハマスの抗争が激化。テロ組織と見なされたハマスへの支援は停止され、ファタハへの支援が行われた。07年にはハマスがガザ地区を占拠。以降、エジプトの仲介で和解の動きを見せたものの、ファタハとハマスは分裂状態のままだ。

アッバス氏は今月18日、サウジアラビア西部ジッダでムハンマド皇太子と会談し、パレスチナの現状を話し合った。ムハンマド皇太子は、パレスチナ人の自決権とパレスチナ国家独立の支持を表明した。

一方、ハマスの最高幹部ハニヤ氏率いるハマス代表団も同じ頃、サウジにいたと伝えられている。イランと緊密な関係にあり、ムスリム同胞団を母体とするハマスは、ここ10 年間、サウジとの関係が冷え込んでいた。サウジは、ファタハとハマスの和解失敗に関してハマスを非難していた。中国の仲介によりサウジとイランの外交関係が修復したことで、ハマスはサウジとの関係回復の道が開かれたようだ。ハニヤ氏は昨年9月、「サウジとの関係回復に取り組みたいが、第三者が阻止しようとしている」と述べている。ハマスは昨年10月、シリアとの関係を回復した後、サウジやヨルダンとの関係回復にも取り組んでいることを明らかにしている。

自治政府は、ガザ地区を実効支配するハマスや西岸地区のイスラム聖戦の支持率の急上昇を懸念している。ハマスがアラブ諸国との関係を回復し、ファタハの衰退が続けば、ハマスによるパレスチナ国家独立へと向かう可能性がある。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »