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ヨルダン川西岸でテロ急増 イスラエル軍、ナブルス封鎖

パレスチナ新組織の幹部殺害か

パレスチナ自治区ナブルスで治安部隊と衝突するパレスチナ人ら=9月20日(AFP時事)

ヨルダン川西岸北部でここ数週間、イスラエルの兵士や民間人を狙った銃撃テロ事件が毎晩のように発生した。封鎖されている都市ナブルスでは、パレスチナの新たなテロ組織の幹部が爆発で死亡、イスラエルとパレスチナとの間で緊張が高まっている。(エルサレム・森田貴裕)

パレスチナの新たな武装組織「ライオンズ・デン(ライオンの巣窟)」の幹部がナブルス旧市街で23日未明、オートバイに取り付けられた爆発装置の爆発により死亡した。ライオンズ・デンは声明を出し、イスラエル軍が爆弾を仕掛け幹部を殺害したと主張。ナブルスにいるすべてのパレスチナ人に幹部の葬式に参加するよう呼びかけた。ソーシャルメディアには、イスラエルの協力者が爆発装置が取り付けられたオートバイを道路脇に駐車する様子や、爆発の瞬間とみられる様子の動画が投稿された。このライオンズ・デン幹部の殺害事件について、イスラエル軍の公式なコメントは出されていない。

イスラエル治安当局者によれば、死亡したこの幹部は、過去にパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の軍事部門であるアブ・アリ・ムスタファ旅団に所属していたためイスラエルの刑務所に8年間収監され、ここ最近ナブルス周辺で頻発している銃撃テロ事件や、9月にテルアビブへ武装したパレスチナ人を送り込むなど、幾つかのテロ攻撃に関与していたという。

イスラエルのメディアによると、ナブルス旧市街を拠点とするライオンズ・デンは、パレスチナの「イスラム聖戦」やパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ系の武装組織「アルアクサ殉教者旅団」を含むさまざまなテロ集団に所属していたメンバーらによって8月に結成された。幾つかの銃撃の様子の動画がソーシャルメディアに投稿され、パレスチナでは短期間のうちに人々の支持を得たという。ヨルダン川西岸の他のイスラム過激派組織とは異なり、ほとんどが世俗的な若者たちで構成されているとみられ、イスラエル当局はこの武装組織を「テロ部隊」と呼んでいる。

パレスチナ民衆による抵抗は、パレスチナの都市部でイスラエル軍に対し石や火炎瓶を投げるなどだが、ライオンズ・デンはナブルス郊外で毎晩のようにイスラエル軍だけでなく民間車両も狙い銃撃を行っている。ここ数週間に発生したライオンズ・デンによる一連の銃撃テロ事件で、イスラエル軍兵士1人が死亡し、民間人にも負傷者が出ている。

ユダヤ人入植地シャベイ・ショムロンで11日にイスラエル軍兵士が死亡したライオンズ・デンによる銃撃事件を受け、イスラエルのガンツ国防相は、「逃走するテロリストを逮捕するため、西岸地区でのテロ活動の取り締まりを継続し、さらに強化する」と述べた。イスラエル軍は翌12日、検問所を設置してテロの拠点となっている西岸北部の都市への通行を制限し、ナブルスを完全に封鎖した。

イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、イスラエル軍による外部からの都市封鎖は、パレスチナ治安当局による治安活動を促し、テロの減少につながると分析する。イスラエル軍は、西岸地区への大規模な軍隊の投入を回避しているが、これはパレスチナ人の死傷者数を減らすためだけでなく、パレスチナ自治政府に自ら問題を解決させることで、ナブルスの統治を取り戻す機会を与えることにもなるという。

今年初めに開始されたイスラエル軍によるテロ活動取り締まり強化による衝突などで、これまでに、パレスチナ人120人以上が死亡した。衝突によるパレスチナ人死者の増加は、ソーシャルメディアで他のパレスチナの若者たちの怒りに火を付ける可能性もある。さらにパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスやイスラム聖戦の扇動や金銭的報酬が、火に油を注ぐことになる。

イスラエルの国内治安機関シャバク(シンベト)によれば、ハマスは、西岸地区のパレスチナ人住民に、イスラエル人に対するテロ攻撃のための資金と武器を提供しテロ活動の拡大を図っているという。自治政府がさらに弱体化すれば、ハマスによる支配は西岸地区にも広がる可能性がある。イスラエルは自治政府の崩壊を懸念している。

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