トップ国際中東イスラエル首相、「2国家共存」支持 国連総会演説で表明

イスラエル首相、「2国家共存」支持 国連総会演説で表明

与野党右派から非難 パレスチナ議長「直ちに交渉を」

22日、米ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会の一般討論で演説するイスラエルのラピド首相(イスラエル政府報道局提供)

イスラエルのラピド首相は22日、米ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会の一般討論演説で、イスラエルとパレスチナの中東和平問題について、「2国家共存」への支持を表明した。与野党の右派はラピド氏の主張を非難したが、パレスチナ自治政府のアッバス議長は歓迎している。(エルサレム・森田貴裕)

イスラエル国会が6月末に解散した後から暫定首相を務めているラピド氏は演説で、「イスラエル国民の大多数は2国家共存を支持しており、私もその一人だ。条件はただ一つ、将来のパレスチナ国家が平和的で、イスラエル市民の安全を脅かすような新たなテロの基地にならないことだ」と語った。和平交渉の再開に向けた具体的な道筋には触れなかった。

ラピド氏の2国家共存の呼び掛けは、左派政党には歓迎されたが、連立与党内の右派や野党右派から非難を集め、イスラエルの政界は大騒ぎとなった。

政治思想の異なる右派、左派、アラブ系政党など8政党による連立政権が6月に崩壊するまで1年間首相を務めたベネット副首相は、「2国家共存を持ち出すのは間違っている。地中海とヨルダン川の間に別の国を置く場所はなく、パレスチナ国家という考えを持ち出す理由もない」と述べた。

サール法務相は、「ヨルダン川西岸でのテロ国家の支持は、イスラエルの安全を危険にさらすことになる。イスラエル国民のほとんどは、それを許さないだろう」と述べ、演説の内容を批判した。

シャケド内務相は、ラピド氏に対し、「演説内容は、政府の政策ではなく個人的主張であり、イスラエルに損害を与え問題を複雑にする」「パレスチナ国家はイスラエルにとって危険だ」と述べた。

最大野党の右派リクードは声明を出し、「ネタニヤフ元首相は何年もの間、パレスチナ問題を国の議題から遠ざけることに成功したが、ラピド氏は1年もたたないうちにアッバス議長を担ぎ上げた」と述べた。リクードを率いるネタニヤフ氏は、ラピド氏の演説に反対し、「イスラエルの未来を危険にさらしている」と非難した。

一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は23日、国連総会の一般討論で演説し、ラピド氏が前日の演説でパレスチナ国家の樹立を認める2国家共存を支持する考えを表明したことについて「前向きな進展」と歓迎。「イスラエル政府が直ちに交渉を始めてこそ、信頼性と真剣さが証明される」と述べ、イスラエルとパレスチナの和平交渉の再開を求めた。また、ユダヤ人入植地の建設、パレスチナ人の住居の取り壊しや立ち退き、殺害などイスラエル当局による一方的な行動をやめるよう求めた。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争(6日戦争)で、ヨルダン川西岸などを占領。国際法違反と指摘されながらも、ユダヤ人の入植活動を進めてきた。現在、占領下の東エルサレムとヨルダン川西岸にある250カ所以上の入植地には約65万人のユダヤ人入植者が生活しており、入植者を守るためイスラエル軍が警備を行っている。

イスラエル民主主義協会が24日に発表した世論調査によると、「次期政権が2国家共存を推進するよう取り組むべきだ」と考えているユダヤ系イスラエル人は31%で、21年2月の調査の44%から減少。ユダヤ系の58%が2国家共存への動きに反対している。一方、アラブ系イスラエル人は2国家共存への支持がはるかに高く、「推進するべき」が60%となっている。

パレスチナ国家の樹立を認める2国家共存は、1993年の「オスロ合意」以降、アラブ連盟や欧米諸国など国際社会も支持してきた。しかし、2014年、イスラエル占領地におけるユダヤ人入植問題などでイスラエルとパレスチナの関係が悪化し、直接交渉は破綻した。それ以来、和平交渉は停滞している。

イスラエルのジャーナリスト、ベン・ドロール・イエミニ氏は、イスラエル紙イディオト・アハロノトで、「パレスチナ国家の誕生は、イスラム組織ハマスによるテロ国家につながる恐れがあり、イランの衛星国家になる可能性が高く、2国家共存が実現する可能性はなきに等しい」と述べている。

イスラエルでは11月1日に総選挙が予定されており、世論調査では右派政党が60%の支持を集めている。ラピド氏の国際舞台での主張によって、連立左派ブロックがアラブ系の票を増やし、右派から票を取り戻す可能性もある。

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