トップ国際中東バイデン米大統領、初の中東歴訪

バイデン米大統領、初の中東歴訪

14日、エルサレムで首脳会談に臨むバイデン米大統領(左)とイスラエルのラピド首相(イスラエル政府報道局提供)
14日、エルサレムで首脳会談に臨むバイデン米大統領(左)とイスラエルのラピド首相(イスラエル政府報道局提供)

国家樹立の道筋を求めるパレスチナ

バイデン米大統領が今月、就任後初めて中東地域を歴訪した。バイデン氏は、最初の訪問国であるイスラエルでラピド首相と会談。両国共通の脅威となるイラン核兵器保有を阻止するための戦略的協力に関する共同宣言に署名した。また、ヨルダン川西岸ではパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談。パレスチナへの経済支援を表明し、米国とパレスチナの関係改善を進める。
(エルサレム・森田貴裕)

バイデン氏は13日、テルアビブ近郊のベングリオン国際空港に到着し、ヘルツォグ大統領らの出迎えを受けた後、歓迎式典での演説で、「イスラエルと米国の関係は非常に深い」と強調。停滞するパレスチナ和平交渉にも言及し、パレスチナ国家樹立を認める「2国家共存」を支持する考えを改めて表明した。ラピド氏は「バイデン氏はイスラエルの親友の一人だ」と語り、訪問を歓迎した。その後、バイデン氏は空港内に展示されているイスラエルの防空システムを見学し、エルサレム市内のホロコースト記念館(ヤド・バシェム)を訪問した。

翌14日、バイデン氏はエルサレムでラピド氏と会談し、イランによる核兵器保有を決して認めず、阻止のためにあらゆる力を行使する用意があるなどとする共同宣言「エルサレム宣言」に署名した。この共同宣言には、バイデン氏が副大統領だった2016年にオバマ政権の下でイスラエルに対し2019年から10年間で380億㌦(約5兆2500億円)の軍事援助を行うとした約束を完全に果たすことも含まれている。

バイデン氏は、会談後の共同記者会見で「イランによる核兵器保有を阻止することは、イスラエルと米国、世界全体にとって安全保障上不可欠である」と述べた。また、「外交がイランの核兵器取得を阻止する最善の方法であると信じ続けている」と述べた。イラン核合意の復帰に向けた協議が続いていることについては「永遠に待つつもりはない」と述べた。

ラピド氏は、バイデン氏に向かって「言葉だけではイランの核開発を止められない。はったりではなく、確実な軍事的脅威を与えることも必要だ」と述べた。また、「イランの核兵器保有を阻止する唯一の方法は、自由世界が武力を行使するとイランが認識することだ。世界を欺き続けるならば、イランは重い代償を払うことになるということを知らなければならない」と述べた。

イスラエルのテレビ局「チャンネル12」は14日夜、治安筋の話として、首脳会談でラピド氏がイランへの圧力を強めるようにバイデン氏を説得することができなかったため、イスラエルは必要に応じ単独で行動する準備を速める可能性があると報じた。

米イスラエル 対イランで共同宣言

イスラエルで3日滞在したバイデン氏は15日、ヨルダン川西岸のベツレヘムでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。ベツレヘムの大統領官邸で行われた会談は約1時間だった。

会談後の共同記者会見でバイデン氏は、1967年ラインでの東エルサレムを首都とするパレスチナ国家樹立を認める「2国家共存」の支持を強調。「パレスチナとイスラエルが話し合う場を持てるよう努力を続ける」と述べた。また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に2億100万㌦を支援すると表明。ヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ人に対する食料安全保障のための1500万㌦(20億円)の支援のほか、会談に先駆けて訪問した東エルサレムのオーガスタ・ビクトリア病院などパレスチナの病院への1億㌦(140億円)の支援も表明した。

アッバス氏は、バイデン米政権による経済支援を歓迎したが、バイデン氏にイスラエルとの和平に向けた確実に実施される具体的な政治的道筋を求めた。バイデン氏は、パレスチナ国家を実現するために米政権が何をするかについての詳細は明らかにしていない。バイデン政権は、エルサレムはイスラエルの首都であり、境界はイスラエルとパレスチナの間の地位交渉を通じて解決されなければならないとしている。

米国とパレスチナとの関係は、トランプ前政権がイスラエル寄りの政策を進めたことで悪化した。バイデン政権は、トランプ前政権が打ち切っていたパレスチナ難民支援を復活させ関係改善を進めるが、パレスチナの政治家らは米主導の和平交渉には希望が持てないという。パレスチナ問題解決への道はまだ遠い。

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