
イラン外務省報道官は3日、米国との戦闘終結に向けた14項目から成る新提案について、米国から仲介国パキスタンを通して回答があったと表明した。これに対し、トランプ米大統領は不満を表明。イラン軍高官は、戦闘再開の可能性が高いと警告した。米・イスラエルは、戦闘再開に向け準備を進めている。(エルサレム森田貴裕)
米国とイランの和平交渉が4月12日、パキスタンの首都イスラマバードで行われたが、合意に至らず決裂。翌13日、米国はイラン南部の港湾に出入りするすべての海上交通の封鎖を開始した。
これまでイランは、米国の制裁を回避し中国などへ向けて原油を安値で輸出していた。米国は2月下旬、イランが原油を密輸するために利用していた「影の船団」に対する取り締まりを実施。イランの外貨獲得源を断ち、経済的締め付けを強めた。
影の船団は、搭載を義務付けられている船舶自動識別装置の電源を切ったり、洋上で違法な原油の積み替えを行ったりしている。イランはまた、ミサイルや爆弾の製造に必要な資材を中国やロシアから輸入していた。その主な経路はインド洋だ。現在、米海軍の戦闘部隊がイランの原油だけでなく軍民両用物資や戦略物資の密輸を阻止するために活動し、船舶の拿捕(だほ)を行っている。
米国は4月下旬、海上封鎖に加え、イランに対する経済制裁を強化し、イラン革命防衛隊(IRGC)が使用している仮想通貨口座を凍結した。報道によれば、米財務省が約3億4400万ドル(約538億円)相当の仮想通貨資金へのアクセスを阻止することに成功した。イランでは仮想通貨が重要な金融手段となっている。ここ数年、イスラエル国内でイランの工作活動に従事していた多数のイスラエル人が摘発されたが、スパイらはイランから報酬として仮想通貨を受け取り、それを現金に換金していた。
イスラエル紙イディオト・アハロノトの軍事ジャーナリストであるロン・ベンイシャイ氏は、イランは時間稼ぎをしているが、それはイランの石油産業に今後何年にもわたって取り返しのつかない損害を与える可能性があると分析する。米国による海上封鎖の影響で、イランは原油を輸出できないため、カーグ島や油田の貯蔵施設は満杯だと指摘。イスラエル軍がイランの石油化学産業の大部分を爆撃したため、精製能力も不足している。
この結果、イランは石油採掘量の削減を余儀なくされ、間もなく完全に停止せざるを得なくなる。数カ月間閉鎖された油井は、ポンプで汲(く)み上げるのに必要な内部圧力を失い、採掘を再開するには油田の生産システムの大規模かつ長期にわたる復旧が必要になるという。
米国によるイラン港湾封鎖が続く中、イランは5月2日、仲介役のパキスタンを通じて14項目から成る新たな和平案を提示した。新提案には、イラン周辺地域からの米軍撤退や海上封鎖の解除、凍結資産の解放、賠償金の支払い、レバノンを含む全戦線での戦闘終結、ホルムズ海峡の新たな管理メカニズムの構築などが盛り込まれている。さらに、米国の制裁解除と引き換えに、イランの核開発計画に関する問題について協議できるとし、米国が同意すれば、パキスタンで協議を行う用意があると示唆した。
新提案に対し、トランプ氏は、過度な要求を含んでいると指摘。「受け入れ難い」と、不満を表明し、核問題の先送りはできないと強調していた。3日には、中東のホルムズ海峡で足止めされている船舶の航行を支援するプロジェクトを始めると表明し、作戦への妨害があれば「強力に対処する」と警告した。
イラン軍司令部のアサディ副監察官は2日、「米国がいかなる約束や合意も順守していないことは証拠から明らかだ」と批判し、「イランと米国の間で戦闘が再開する可能性が高い」と述べた。
イスラエルは、イランが核開発を放棄し、弾道ミサイル開発の制限に同意するには、国家インフラへの壊滅的な打撃が必要だと主張。米イラン合意によって、イランの資金が解放され、イランが弾道ミサイル開発を再建し、代理勢力を支援することを懸念している。
米軍は、イランとの戦闘再開に向けた準備を進めており、極超音速ミサイルを中東に配備した。イスラエルも全戦線で戦闘再開に備えている。





