核保有に近づくイラン 兵器級ウランまで数週間か イスラエルの先制攻撃も

イランの首都テヘランで、ミサイルの看板の前を通る市民 =4月22日(EPA時事)
イランが核合意の制限を超えて濃縮ウランの生産を続けており、国際原子力機関(IAEA)は、核兵器製造に必要な量の高濃縮ウランを入手するまでわずか数週間に迫っていると報告した。イランは「核開発は民間利用が目的だ」と主張を続けるが、ウラン濃縮計画を巡り懸念が高まっている。(エルサレム森田貴裕)

IAEAのグロッシ事務局長は先月下旬に発表した調査報告で、イランが核兵器を製造するのに十分な量の高濃縮ウランを入手するまで「あと数カ月ではなく数週間」と述べた。グロッシ氏は、核弾頭として機能させるには他に多くのものが必要であり、数週間でイランが核兵器を保有するという意味ではないとも述べた。また、イランの核開発は「臆測の域を出ない」として、ウランの高濃縮活動や、核査察官への不透明な対応を批判。濃縮ウランの痕跡が予想外の場所で発見されるなど、イランの核開発計画には依然として未解決の問題があると指摘した。近く核査察団を派遣するという。

イランは2021年4月以降、純度60%にまでウランを濃縮している。グロッシ氏は今年2月の調査報告で、イランは高濃縮ウランの生産を続けているが、これは商業利用の範囲をはるかに超えており、核兵器級のウラン濃縮度90%まであと少しの技術的段階にあると述べていた。

イランの核開発を巡っては15年、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6カ国で、イランによる原子力活動の大幅な制限と引き換えに、経済制裁を解除するとしたイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」が成立した。核合意では、高濃縮ウランの核兵器転用を防ぐため、イランのウラン濃縮を3・67%までに制限した。

しかし、トランプ前米政権は18年、核合意には根本的な欠陥があり、イランの核開発の野心を止めることはできないなどとして一方的に離脱を表明。イランに対し経済制裁を再開した。これに反発したイランは20年、核合意の制限を超えて、保有するウランを無制限に濃縮すると宣言し、核合意違反を続けている。

イラン核合意への復帰に向けて、欧州連合(EU)などを仲介に米国とイランの間接協議が21年に始まったが、バイデン米政権下での協議は行き詰まり、打開の見通しは立っていない。

イランは先月13日、イスラエルの軍事施設を標的に史上初めてとなる直接攻撃を行い、ドローン(無人機)や弾道ミサイルなど300発以上を発射。在シリア・イラン公館への攻撃に対する正当な自衛権の行使だと主張した。

イスラエルは本土攻撃の報復として、イラン中部イスファハン州のナタンズの核施設を防衛する空軍基地を攻撃し、ロシア製の防空システム「S300」のレーダーに損傷を与えた。この攻撃は、イランの核武装化への道を容認しないというメッセージであると報じられた。

米シンクタンクのランド研究所の空軍プロジェクトにおける「戦略・ドクトリン」プログラムのディレクターであるラファエル・S・コーへン氏は、米外交専門誌フォーリン・ポリシー(FP)で、イスラエルは、核兵器を持っていると広く信じられてきたが、イランの通常攻撃を抑止するには不十分だということが今回のイランによる攻撃で証明されたと語る。イスラエルは今後も、イランから代理武装勢力への軍事物資など支援の流れを断ち切るため、外国で活動するイラン工作員などの目標を攻撃し続ける必要があるという。コーへン氏は、イラン・イスラエル戦争は始まったばかりだが、イランは核爆弾の製造に一歩ずつ近づいており、国際社会がイランに対し、代理勢力の抑制や核開発について説得できなければ、さらにエスカレートすると分析する。

昨年サウジアラビアとイランが7年ぶりに国交を回復したとはいえ、イランの核武装化は、イスラエルだけでなく湾岸諸国や米国などにとって安全保障上の脅威であることに変わりはない。

イランの核兵器保有を認めていないイスラエルが、イランの核施設を標的に先制攻撃を行う可能性が一層高まっている。

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