【エルサレム森田貴裕】イスラエルのネタニヤフ首相は8日夜、ビデオ声明で、イスラム組織ハマスの最後の拠点となったパレスチナ自治区ガザ最南部の都市ラファへの地上侵攻について、「期日は決めてある」と強調した。人質の解放とハマスの壊滅に向けて作戦を実施する構えを改めて示したものだ。ただ、具体的な日程には触れなかった。
ネタニヤフ氏は「人質全員の解放と完全な勝利には、ラファへ侵攻してテロ組織の大隊を排除する必要がある」と訴え、「必ず実現する」と強調した。同国のガラント国防相は8日、ラファ侵攻に備えるため、ガザ地区南部ハンユニスから地上部隊を撤収したと述べた。
米国務省のミラー報道官は8日、記者会見で、「イスラエルによるラファ侵攻の日程について米国は説明を受けていない」と述べた。イスラエルを支援してきた米国は、避難民ら約150万人が集まるラファへの地上侵攻では民間人の犠牲者がさらに増える恐れがあるとして、イスラエルに対し民間人の保護を求めている。対応次第ではガザ地区への米国の政策を変更すると警告している。
一方、中東のメデイアによると、エジプトの首都カイロで再開した人質解放と戦闘休止を巡る交渉で、ハマスは9日、声明を出し、仲介国のカタールなどが提示した新たな休戦案を検討すると発表した。
報道によれば、カタール、米国、エジプトがまとめた新案は、6週間の戦闘休止期間中に、ハマスが女性と子どもの人質を解放し、イスラエルはパレスチナ人囚人最大900人を釈放する内容。ガザ地区北部への住民の帰還や1日にトラック約500台分の支援物資の搬入も含まれているという。
ただ、恒久的停戦とガザ地区からの軍の完全撤収を求めるハマスに対し、これを否定するイスラエルとの隔たりは大きく、交渉の先行きは依然不透明だ。