祝意伝えた日本政府は…―イラン革命45周年

イラン南部ミナブで演説に臨むライシ大統領(AFF時事)
イラン南部ミナブで演説に臨むライシ大統領(AFF時事)

ハマス支援や人権蹂躙も

イランのライシ大統領は11日、首都テヘランのアザディ広場で開かれたイラン革命45周年の記念集会で、「イラン国民は外国勢力への依存ではなく独立の道を選んだ。イランは今後もいかなる障害にも負けず前進していく」と強調する一方、宿敵イスラエルのシオニスト政権の打倒を訴えた。

国営イラン通信(IRNA)通信は、外国首脳からライシ大統領に送られたきた祝意のメッセージを詳細に報じ、その中には日本も含まれていた。イランは、1200人余りのイスラエル国民を虐殺したパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスを軍事的に支援している。そのイランに祝意を伝達したことは、ハマスなどのテロ組織を支援するイラン聖職者主導政権の政治を容認するものだ、と受け止められてしまう。

ライシ大統領が昨年12月に訪問した中国からも祝意が寄せられ、同通信は「習近平国家主席が革命勝利45周年を祝った」と報じた。この他、祝意を伝えたのは、カザフスタンのトカエフ大統領、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、サウジアラビアのサルマン国王とムハンマド皇太子、ベラルーシのルカシェンコ大統領らだ。

イランはハマスだけではなく、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの反政府武装組織フーシ派などイスラム過激テロ組織を軍事的、経済的に支援。シリア内戦ではアサド独裁政権をロシアと共に軍事支援してきた。

ライシ大統領はこれらの活動を革命45周年の成果として言及する一方、イスラエル壊滅を呼び掛けたのだ。イランはサウジ、アラブ首長国連邦と共に日本にとって重要な石油供給国だが、革命への祝意伝達はイランの世界観、価値観を容認することになる。

イランでは、クルド系女性マフサ・アミニさん=当時(22)=が頭部のスカーフから髪がはみだしているとして逮捕され、尋問中に意識を失って死亡した事件が大規模な女性抗議デモに発展したことは記憶に新しい。イランでは女性の権利が蹂躙(じゅうりん)され、言論の自由も保障されていない。

イランの企業は80%が国有企業だ。経済の大部分は、政府、宗教団体、軍事コングロマリット(複合企業)によって支配され、純粋な民間企業はほとんど存在しない。例えば、最高指導者ハメネイ師が管理する「セタード」と呼ばれる組織は、数十億㌦規模のコングロマリットを率いる。ハメネイ師の経済帝国は、重要な石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで多くの分野を管理下に置いている。ハメネイ師の支持を得て大統領に選出された強硬派のライシ氏も、イラン最大の土地所有者の経済財団を主導している、といった具合だ。

これに対し、欧州連合(EU)や米国は、イランの重大な人権侵害を批判し、制裁措置を取っている。イランがウクライナ戦争でドローン(無人機)をロシアに供与していることに対しても追加制裁を科している。

さらに看過できないのは、イランの核開発だ。ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)は昨年末、イランが高濃縮ウランの増産に乗り出していると報告したばかりだ。欧米社会が結束してイランの核開発に警告を発している時に、イラン革命45周年に祝意を伝えた日本の外交は一体どこに目を向けているのだろうか。(ウィーン・小川 敏)

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