【ウィーン小川敏】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員がパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム過激テロ組織ハマスのイスラエル奇襲に関与していた疑いが浮上、UNRWA支援国の間で、資金拠出を一時停止すると表明する国が相次いでいる。
ドイツ外務省は、「(奇襲への関与を巡る)疑いが解明されるまで、当面資金拠出しない」ことを表明した。ドイツは2023年、2億ユーロ(約320億円)以上を拠出している。資金はガザ地区のパレスチナ難民に水、食料、衛生設備、医療品など基本的物資の調達に使用される。
それに先立ち米国務省も、テロへの関与の詳細が明らかになり、国連側が適切に対応するまで拠出を停止すると発表していた。そのほか、カナダ、オーストラリア、英国、イタリア、フィンランドも同様の措置を取ることを表明している。
UNRWAのラザリニ事務局長は27日、「関与した疑いのある12人の職員の契約を直ちに解除し、解雇した」と説明、調査に乗り出していることを明らかにした。同時に「人道的支援活動が困難になる」として、支援停止の再考を求めた。
ラザリニ氏によると、「テロに関与した職員は刑事訴追を含む責任が問われる」という。ただし、国連側はこれらの職員がどのような活動をしていたのかについては言及していない。国連のグテレス事務総長は「事態は深刻だ」と懸念を表明した。
一方、イスラエルのカッツ外相はⅩ(旧ツイッター)で、ラザリニ事務局長の引責辞任を要求した。
ハマスのイスラエル急襲後、欧米諸国ではパレスチナ支援の停止を求める声が出ていた。1953年以来、UNRWAを積極的に支援してきた日本政府に対しても、「ハマスのテロを助けている」として、支援停止を求める声が聞かれた。日本は22年、6番目に多い3315万㌦を拠出した。職員のテロ関与が実証されれば、日本政府も支援停止などの対策が急務となる。