【ワシントン山崎洋介】米英両軍は11日、イエメンの反政府勢力フーシ派の拠点に対して攻撃を行った。紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返すフーシ派への報復措置。一方、フーシ派は反撃を警告しており、パレスチナ自治区カザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスが抗戦する中、中東情勢はさらに緊張が高まることが予想される。
バイデン米大統領は声明で「航行の自由を危険にさらすフーシ派が使用するイエメンの多くの標的に対する攻撃を成功させた」と発表。「必要に応じて、国民と自由な国際貿易を守るためのさらなる措置を指示することをためらわない」とも強調した。
スナク英首相も声明で、「国際社会からの度重なる警告にもかかわらず、フーシ派は紅海で攻撃を続けている」と非難。その上で「自衛のために限定的、必要かつ適切な行動を取った」と表明した。
米国防省などによると、攻撃は米英軍の戦闘機による空爆と、紅海の米軍艦船から発射された巡航ミサイル「トマホーク」などによって行われた。フーシ派の防空システムや無人機のほか、巡航・弾道ミサイルの保管・発射場所など60カ所以上を標的とした。
オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダが米英軍の作戦を支援。ロイター通信によると、首都サヌアを含むイエメン全土の標的を攻撃した。
一方、米英の報復攻撃に先立ち、フーシ派の指導者アブデルマリク・フーシ氏はテレビ演説で、「米国によるいかなる攻撃も無反応では終わらない」と反撃を警告。「われわれはイスラエルに関わる船舶を標的にする決意を固めており、そこから引き下がるつもりはない」と述べ、今後も船舶の攻撃を続ける意志を示した。
バイデン政権には、フーシ派への報復を行うよう共和党議員から圧力がかかっていた。同党のロジャー・ウィッカー上院議員は、報復攻撃を受け「この攻撃は2カ月遅れだが、紅海での抑止力回復に向けた前向きな第一歩だ」と述べた。
フーシ派は、パレスチナ自治区カザ地区でイスラエルと交戦するイスラム組織ハマスを支持しており、イスラエルに関連すると見なした船舶に攻撃を加えている。昨年11月には日本郵船が運航する自動車運搬船を拿捕(だほ)した。
紅海は欧州とアジアを結ぶ海上交通の要衝。多くの船舶が紅海を避け、アフリカ南端の喜望峰を回るルートに切り替えるなど、国際貿易にも大きな影響が出ている。
日米英、ドイツ、オーストラリア、バーレーン、シンガポールなど13カ国は3日、共同声明を発表し、フーシ派の船舶攻撃について、「違法で容認できず、深刻な不安定化をもたらしている」と攻撃を非難。フーシ派が行動を改めない場合、「結果について責任を負うことになる」と警告していた。