【エルサレム森田貴裕】イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザに残る人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指し、ガザ地区全域で攻勢を強めている。
イスラエル軍は10日、過去1日でハマスの軍事インフラなど250カ所以上を標的に空爆などを行ったと発表した。軍によると、夜間の攻撃では、ガザ地区南部ハンユニスの中心部を空爆し、ハマスの軍事施設や地下トンネルに通じる複数の立て坑などを破壊。ガザ地区北部シュジャイヤでは、地上部隊がハマス司令本部を襲撃し、対戦車ミサイルなど多数の武器を発見したという。
イスラエル軍報道官は9日、「(ガザ地区北部の)シュジャイヤやジャバリヤでは、投降した多数のテロリストが武器や装備を軍に引き渡した」と述べた。
SNS上には、イスラエル軍がハマス戦闘員とみられる多数の下着姿のパレスチナ人を拘束している画像や動画が投稿された。新たな動画では、男が銃と弾倉を頭上にかざし、ゆっくりと戦車の前を通って地面に置く様子が映されている。
イスラエル軍は、過去2日間で200人以上のハマス戦闘員を拘束し、司令官を含む数十人を取り調べのためイスラエルに移送した。軍報道官は、投降した戦闘員の尋問から得られた情報として、「地下にいるハマス指導部は、戦況が厳しいにもかかわらず現実を否定しており、戦闘員らは不満を抱いている」と語った。また、「戦闘員たちは、住民を無視した指導部の姿勢に懸念を示している」とも述べた。
イスラエルのメディアによると、10月7日にイスラエル南部に奇襲攻撃を仕掛けた首謀者とされるハマスのガザ地区トップ、シンワル氏は、交戦が始まった初期に、ガザ市から南部に向かう人道支援の車列に隠れてハンユニスに移動していたという。軍は、シンワル氏がハンユニスに潜伏している可能性があるとみて、捜索を続けている。
イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問は9日、地元メディアのインタビューで、これまでに7000人以上のハマス戦闘員を殺害したと述べた。ハネグビ氏は、シンワル氏の殺害が軍事目標の達成につながる可能性があるとの考えを示し、「軍事的圧力によって、再び戦闘が休止し、残る人質が解放される可能性がある」と強調した。