イスラエルとイスラム組織ハマスの人道的な戦闘休止は7日間で終了した。イスラエルは女性と子供の人質全員の解放を求めたがかなわず、ハマス壊滅を目指しパレスチナ自治区ガザでの戦闘を再開した。(エルサレム・森田貴裕)
イスラエルとハマスの4日間の戦闘休止は11月24日朝に発効し、2度延長された。さらなる延長に向けて、仲介役のカタール、エジプト、米国を交えた交渉が進められたが、7日間で終了となった。
戦闘休止期間中、ハマスはガザ地区で拘束する人質のうち外国籍を含め計105人を解放した。イスラエル側は、パレスチナ人の女性と未成年者計240人を釈放した。これまでに解放されたイスラエル人の人質は計86人。イスラエル軍によれば、依然として約140人が拘束されているという。
イスラエルは女性と子供の人質全員の解放を求めたが、ハマスはイスラエル軍による人質解放作戦を阻止するため、人質をガザ地区全域に分散させ、連絡が取れない者もいるとされている。
イスラエルのメディアによると、戦闘休止期間中、ガザ地区のハマス指導者シンワル氏が何度も合意違反を試み、その都度エジプトがシンワル氏に強い圧力をかけたという。ハマスは、戦闘休止期間中の30日朝、エルサレムのバス停を銃撃し、イスラエル人3人を殺害。犯行声明を出している。また、戦闘休止が終了する前から、ロケット弾を発射した。
シンワル氏は30日、イスラエルへの奇襲攻撃以来初めての声明で、「占領者(イスラエル)の指導者たちは、10月7日は単なるリハーサルだったということを知るべきだ」と述べた。
シンワル氏は、イスラエルへの奇襲攻撃前、「数字の1、1、1、1を忘れるな」と述べている。詳細は明らかにしていないが、イスラエル兵士1人につき、収監されているハマスメンバー「1111人」の釈放を要求する意味だとされている。
イスラエルは2011年、ハマスの捕虜になっていたイスラエル兵のギラッド・シャリット氏と交換に、パレスチナ人囚人1027人を釈放した。17年にガザ地区でハマスのトップになったシンワル氏は、そのうちの1人で、複数の罪で四つの終身刑を言い渡されていたが、わずか22年の服役で釈放された。イスラエルに協力した多くのパレスチナ人を殺害してのし上がったことから「ハンユニスの肉屋」と呼ばれ恐れられている。
イスラエルに収監されている数千人のパレスチナ人囚人全員の釈放を目指すハマスは、今後、拘束しているイスラエル兵士の解放と引き換えに囚人釈放を要求してくる可能性が高い。交戦当初、ハマスは囚人全員の釈放を求めていた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が1日、イスラエル当局者らの話として報じたところによると、イスラエルは世界各地にいるハマス指導者の殺害に向け準備を進めているという。イスラエルへの奇襲攻撃に関与した人物を数年のうちに追い詰めるという。
イスラエルが特に注目している人物はハマス指導者のメシャル氏で、97年にネタニヤフ首相が暗殺を命じたが失敗し、生き残った。ネタニヤフ氏にとっては、今回の作戦は2回目のチャンスとなる。メシャル氏は現在、ハマスの最高指導者ハニヤ氏と共にカタールに滞在しているが、イスラエルはガザ地区で拘束されているイスラエル人人質の解放交渉への悪影響の懸念から、まだ作戦を開始していない。
ネタニヤフ氏は11月22日の国民に向けた演説で、イスラエルの対外情報機関モサドに「ハマス指導者がどこにいようと狙うよう命じた」と述べており、ハマス壊滅作戦を外国でも行う意向を明らかにしていた。
イスラエル軍は1日、ハマスとの戦闘を再開した。イスラエルを支援する米国は、ガザ地区での戦闘で民間人の大量の犠牲や大規模な避難を避けるようイスラエルに求めている。これに対しイスラエル軍は、攻撃エリアから住民を安全な場所に誘導するための避難マップを公開した。避難マップは数百のブロックに分けられており、住民にSMS(ショートメッセージ)で軍から退避の指示が送られるという。
イスラエル軍は2日からこの避難マップの使用を始めた。ビラも配り避難を呼び掛けていた。ただ、ハマスは住民に自宅を離れないよう求めているとみられ、空爆によるパレスチナ人の犠牲者は増える一方だ。