【エルサレム森田貴裕】イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区北部で9日、イスラエルが1日4時間の戦闘一時停止を開始した。北部から南部への避難路も新たに設置し、ガザ住民の戦闘地域からの退避を拡大する。
ハマスの壊滅を目指しガザ地区で攻勢を強めるイスラエル軍は9日、戦闘一時停止について、「ガザ住民への人道支援のため時間や場所を限定して実施している」と表明した。また、「停戦はない」と強調した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、イスラエルがガザ地区北部で1日4時間の戦闘一時停止を開始すると発表した。
イスラエル高官によれば、イスラエルは避難路をもう一つ設置して、住民に対しては開放の3時間前に通知する。イスラエルはここ数日、ガザ地区北部住民を南部へ安全に避難させるため避難路を設置し、1日4~6時間開放。北部住民に退避するよう繰り返し呼び掛け、10万人以上が南部へ移動している。
イスラエルのネタニヤフ首相は9日放映の米FOXテレビで、人道的な戦闘一時停止で合意したことを明らかにした。ネタニヤフ氏は、「ガザを占領するつもりはない」「ガザ市民が戦闘地域から安全に移動できるようにしたい」と語った。停戦については「人質の解放なしにはあり得ない」と改めて強調し、ハマス壊滅へ向け攻撃を続行する考えを示した。
国連によると、ハマスとイスラエルの戦闘開始以来、ガザ地区の人口210万人のうち、160万人が避難しているという。
イスラエル軍は10日、同軍の地上部隊が、先月7日にイスラエル南部地域に侵入し奇襲攻撃を行ったハマス特殊戦闘部隊のテロリスト多数を殺害したと発表した。
イスラエル軍によると、地上部隊による夜間の襲撃作戦では、イスラエル軍基地やキブツなどへの奇襲を指揮したハマス司令官や、狙撃部隊の指揮官を含むハマス戦闘員21人が死亡した。また、地上部隊が、海岸にある輸送コンテナ内や住宅密集地に隠されていたロケットランチャーを発見したという。
一方、ハマスと連携する武装組織「イスラム聖戦」は9日、ハマスによる奇襲でイスラエルから連れ去りガザ地区で拘束されている人質240人のうち、新たに2人の映像を公開した。映像の中では、高齢の女性と少年が、イスラエル政府に対し人質解放に向けてハマス側と交渉するよう求めている。これを受け、イスラエル側は「心理的なテロだ」と非難した。