【連載】ハマス掃討へ―試練のイスラエル(3) SNS虚偽情報 激化する戦時プロパガンダ

空爆による煙が立ち上上がるパレスチナ自治区ガザ=10月18日、(UPI)

10月7日以降のパレスチナ自治区ガザ地区を武装勢力で実効支配し、主な拠点とするテロ組織ハマスからの前代未聞の襲撃を受けたイスラエルの動向について、政治議論を急速に混乱させている。それが政治家たちによって特定の議題や問題を推進する目的で、どのように利用されているのか。

ハマス掃討へ―試練のイスラエル(2) 鉄の剣作戦 巨大な地下要塞が主戦場

人類の歴史の多くは、民間人は国内を含めた紛争の経過について十分な情報を与えられず、誤解を受けてきた。戦時中のプロパガンダの使用およびその影響についての警告にも長い歴史がある。

X、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSには、恐怖や怒りなど感情的な投稿に対する固有の偏見があるため、脅威の警告は閲覧数が多くなる。時事問題に関心を抱く人は皆、不確実性について理解しようとするが、一部の政治関係者にはそれを利用して恐怖を煽(あお)る試みを行う人たちもいるのが現実だ。

不正確な情報にさらされると、人々は何が真実なのか混乱し、理解することを疑ったり、信念や行動を主張したり、不正確な情報に依存したりする可能性がある。現在、不正確な情報にさらされる状況が蔓延(まんえん)している。理解が追い付かず、深く考えない限り、考え方や意思決定が変わってしまう。これは重要な点だ。

イスラエルがガザでテロ組織ハマスに対する軍事作戦を強化する中、情報戦も激化した。両国とその同盟国のメディアは、世界中の視聴者の注目を集めようと競い合っており、その多くはSNS上で配信される。

すべての戦争は情報戦争でもあり、軍事プロパガンダは何も新しいことではない。しかし、テロ組織ハマスの虚偽で誤解を招くネット上の画像によって人々の憎しみの声がオンライン上にあふれて炎上し、視覚的な不協和音となり、実際に何が起こっているのか、そしてほぼ瞬時のニュースが誰に情報を提供しているのかという疑問を投げ掛けている。

画像には、過去の紛争のビデオ、アクション映画のシーン、偽の投稿やスクリーンショット、改ざんされた声明や写真が含まれる。投稿はその後、クリックとフォロワーを求めるだけの特定グループやその他の人々によって共有され、宣伝される。正確な報道をしようとする報道機関にとって、スクリーンに直接配信されるこの信頼性の低い情報の洪水は倫理的なジレンマを生み出す。

10月17日にガザ市のアルアハリ・アラブ病院で起きた爆発はその好例だった。ハマスはイスラエルの空爆で民間人数百人が死亡したと主張し、この主張は世界のメディアに飛び火した。

イスラエルはすぐにこの主張を否定し、過激派が発射したロケット弾が誤爆して現場に着弾したと主張した。その後数日で、イスラエル側の主張を裏付ける視覚的証拠が明らかになり、米国防総省も独自の情報を引用してこれを支持した。

報道機関はビデオを比較したり、軍事専門家に現場の写真を調べるよう依頼するなど、爆発の原因の検証を試みた。しかし、メディアにとって速報ニュースを最初に伝えなければならないというプレッシャーは、事実が明らかになる前に報道を急ぐことを意味する。その結果、虚偽がニュースメディアを操作することに陥っている。インスタントニュースの時代において、検証はジャーナリストにとってジレンマを引き起こす。

米国の第1次世界大戦参戦に反対したハイラム・ジョンソン上院議員も、当時戦争が起こったとき、最初に犠牲になるのは「真実」だと語った。

(仏国立安全保障防衛研究センター上席フェロー・新田容子)

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