【連載】ハマス掃討へ―試練のイスラエル(2) 鉄の剣作戦 巨大な地下要塞が主戦場

10月27日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユ ニスの東方で、イスラエル軍の攻撃によって 照らし出された空(AFP時事)

テロ組織ハマスは10月7日に空と地上からイスラエルを奇襲攻撃し、1400人以上のイスラエル人を殺害、220人以上を人質に取った。イスラエルは反撃を開始し、軍事作戦に「鉄の剣作戦」と命名した。

<前回>ハマス掃討へ―試練のイスラエル(1) テロ組織ハマス 慈善と軍事のネットワーク

この作戦の核心は、戦略的現実を変えること、 ハマスとその他のテロ組織を壊滅すること、目標達成には地上作戦が必要であること、決定的な勝利が得られるまで戦争は終わらないという確固としたものだ。

イスラエルは、パレスチナ自治区ガザ地区のハマスやその他のテロ組織を阻止し、次の敵対行為を遠ざけることを目的として、今まで繰り返し戦闘を強いられた。今回の虐殺は、戦略的現実を変え、イスラエルへの脅威を取り除く必要があることを明らかにした。

今回の戦闘中、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)はガザ地区ハマス当局がガザ市の敷地内から難民向けの燃料と医療品を盗んだことを示唆した。その後X(旧ツイッター)に投稿したがすぐに削除、ハマスによる窃盗を訂正した。過去も同じ手口で救援物資はハマスに渡っており、国際機関は脅迫されて口止めされている可能性が高い。

 市内の建物には、ハマスの施設が埋め込まれている。ハマスは地表の下で、作戦の中心となる広大な地下トンネル網を構築、イスラエルはガザ地区の空と海へのアクセスと、72㌔の陸地国境のうち59㌔(13㌔南にエジプトとの国境)を管理しており、トンネルは武器や装備、人員を運び込む数少ない手段の一つだ。

地下約70㍍に達する深さで、合計約1300本あり、事情に詳しい西側と中東の情報筋によると、砂浜の360平方㌔の海岸地帯とその国境の下に、攻撃、密輸、保管、運搬用の巣穴など、さまざまな種類のトンネルを走らせ、地下要塞(ようさい)の機能を備えている。

このトンネルこそがイスラエルの砲火から生き残れた要因の一つである。ハマス指導者と約2万人の戦闘員が利用するこのネットワークは北朝鮮の地下トンネルネットワークのスケールに匹敵するほど巨大で、イスラエル側はイランだけではなく北朝鮮がハマスの計画を支援した可能性を排除していない。

最近釈放されたイスラエル人人質のヨチェベド・リフシッツさん(85)は「蜘蛛(くも)の巣のようで、本当にたくさんのトンネルがあるように見えた。私たちは地下を何キロも歩いた」と語った。トンネルを通って密輸されるすべての物品に課す通常20%の税金で、亡命中のハマス指導者らは数十億㌦に達する巨万の富を獲得している。

イスラエル軍は10月29日、ハマスがガザの主要病院アル・シファをトンネルや作戦センターの盾として利用していると発表。また、イスラエルが解読に失敗した独自の暗号化通信システムを開発していることが明らかになった。

イスラエルは、市街戦では人口密集地域における敵の塹壕(ざんごう)での戦い、ハマスの仕掛けによる簡易爆発装置による移動制限、情報の混乱を見据えている。ハマスが作戦範囲全体に罠(わな)を仕掛け周到に準備を整え、要塞化された地下ネットワークはハマスの迅速な移動を容易にし、そしてイスラエル民間人への同時砲撃の継続も想定している。

戦いが終わった後、つまりハマスの排除と他のテロ組織の排除の後には、ガザ地区の市民のために、地域的・国際的なパートナーや同盟国の支援を得て、新たな堂々とした現実を築かなければならない。これは新たな困難に直面することを意味する。(仏国立安全保障防衛研究センター上席フェロー・新田容子)

spot_img