トルコの最大都市イスタンブールの中心部で13日、爆弾テロ事件が発生し6人が死亡した。トルコ当局は、反政府武装組織クルド労働者党(PKK)が関与したと主張し、実行犯のシリア国籍の女を含め、17人を逮捕した。トルコ軍は、報復として国境を接するシリアとイラクの北部にあるPKKなどクルド人武装勢力の拠点を空爆した。(エルサレム・森田貴裕)
イスタンブール中心部にある繁華街イスティクラル通りで13日、爆発があり、6人が死亡、81人が負傷した。エルドアン大統領は13日、イスタンブールでの記者会見で、テロの可能性を指摘し「爆発に関与した者を処罰する」と述べた。トルコ当局は、監視カメラの映像や目撃者の証言などから、爆発現場に爆弾を置いたPKKに所属するシリア国籍の女を逮捕したと発表した。監視カメラには、ベンチに座っていた女がベンチの下に爆弾が入っていたとされるバッグを押し込む様子が映し出されていた。女がベンチを離れてから数分後に、爆発した。ソイル内相は14日、「爆発には、PKKが関与した」「われわれは、この凶悪なテロ攻撃の責任者に報復する」と述べた。
PKK側は、爆発への関与を否定した。PKKは、トルコ、米国、欧州連合(EU)からテロ組織に指定されている。1984年から独立を求めてトルコ政府との武力闘争を続けており、これまでに4万人以上が犠牲となった。トルコでは、2015年から17年にかけて、PKKや過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロが頻発していたが、その後の治安当局による取り締まり強化で、ここ最近、大規模なテロは起きていなかった。
クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)も関与を否定した。SDFの主要構成部隊であるクルド人民兵組織「クルド人民防衛部隊」(YPG)の報道官は、「トルコは、われわれに対する攻撃を正当化しようとしている」と批判した。SDFはシリア内戦でIS掃討のため米国などから支援を受けてきたが、トルコはYPGをPKKの延長線上にあるテロ組織とみなしている。トルコは16年以来、YPGを標的にシリア北部への越境軍事作戦を繰り返し、一部地域を実効支配している。トルコはYPGを排除し、南部国境からシリア側に幅30㌔の安全地帯を設置する考えだ。
トルコ国防省は20日、シリア北部およびイラク北部でPKKなどクルド人武装勢力の拠点を標的に空爆を実施したと発表した。同省によると、トルコ軍による空爆は、イラク北部の山岳地帯カンディル、アソス、ハクルク、シリア北部のトルコ国境に近いクルド人が大多数を占めるコバニ、タル・リファト、シジレ、デリクで行われた。アカル国防相は声明で、「テロ攻撃に対しては報復する」と述べ、「テロ組織が所有するシェルター、洞窟、トンネル、武器庫など89カ所の標的を破壊し、テロ組織の幹部を含む多数のテロリストを無力化した」と説明。「空爆作戦は成功し、テロ組織の本部は破壊された」と強調した。
一方、SDFのスポークスマンは、「19日夜のトルコ軍による空爆で、穀物サイロ、発電所、病院など民間のインフラが破壊され、民間人11人、SDF戦闘員1人、警備員2人が死亡した」と述べた。SDFは声明で、トルコ軍の空爆に対し報復を宣言。タル・リファトからYPGが発射したロケット弾がトルコ国境の検問所近くに着弾し、トルコの警官ら8人が負傷した。
これとは別に、国営シリア・アラブ通信(SANA)は20日、シリア軍関係者の話として、シリア北部のハサカ県やアレッポ県で、トルコ軍の空爆により、多くのシリア軍兵士が死亡したと報じた。
英国に拠点を置くシリア人権監視団(SOHR)は20日、トルコ軍の空爆で、SDF戦闘員やシリア軍兵士ら少なくとも35人が死亡したと伝えている。
エルドアン大統領は5月、シリアとの国境沿いで新たな軍事作戦を開始すると述べ、段階的に作戦を拡大し、テロ組織に指定しているクルド人武装勢力を一掃するとしている。トルコは先月26日、シリアとイラクで国境を越えた対テロ作戦を行うトルコ軍部隊の任務を2年延長した。
シリア北部トルコとの国境付近では21日、クルド人武装勢力やシリア政府軍がトルコ南部に向け砲撃やロケット弾を発射し、2人が死亡、6人が負傷した。攻撃の応酬が繰り広げられ、さらに緊張が高まっている。