イスラエル総選挙 ネタニヤフ派勝利 右派・極右連立政権誕生か

パレスチナは対立激化懸念 対米関係に影響も

2日、イスラエル総選挙の投票が終わり、エルサレムで支持者らに手を振るネタニヤフ元首相(AFP時事)

約3年半で5回目となったイスラエル総選挙(国会定数120)が1日に実施された。極右「宗教シオニズム」の躍進により、ネタニヤフ元首相を中心とする右派・宗教勢力が過半数を獲得した。右派と極右の連立政権が発足すれば、イスラエル史上最も右寄りの政権が誕生することになり、パレスチナとの対立激化が懸念されている。(エルサレム・森田貴裕)

イスラエル選挙管理委員会は3日夜、開票結果を発表した。定数120議席のうちネタニヤフ氏率いる最大野党の右派リクードが32議席で第1党、反ネタニヤフ連立政権のラピド首相率いる与党の中道イェシュアティドは24議席で第2党となった。

ネタニヤフ支持派陣営は、宗教シオニズムが8議席増やし14議席で第3党となったほか、ユダヤ教超正統派シャスが11議席、同じく超正統派のユダヤ教連合が7議席で、過半数を上回る64議席を獲得した。

一方、反ネタニヤフ派陣営は、ガンツ国防相率いる新たな政党、中道右派「国民統一」が12議席、極右「わが家イスラエル」が6議席、アラブ系「ラアム」が5議席、中道左派「労働党」が4議席を獲得したが、与党の左派メレツが議席を得るのに必要な最低得票率3・25%に届かず6議席を失うなど、51議席にとどまった。総選挙の投票率は70%を超え、近年では高水準となった。

昨年に汚職疑惑で退陣に追い込まれた73歳になるネタニヤフ元首相は約1年5カ月ぶりに政権に返り咲くことになる。2009年から連続12年、通算15年にわたって首相を務めたネタニヤフ氏は、三つの事件で詐欺、背任、贈収賄罪などに問われ、昨年6月に退陣を余儀なくされた。本人はすべての罪状を強く否定し、政治的迫害だとして法執行機関や裁判所を非難している。ネタニヤフ氏の汚職事件の公判は2年以上にわたり現在も続いている。リクードを中心とする連立政権に参加するとみられる宗教シオニズムは、広範な法改正に意欲的で、詐欺や背任などに関する法律が改正されれば、ネタニヤフ氏の公判は中止されるとみられている。

宗教シオニズムは、以前極右ヤミナに所属していたスモトリッチ党首と、極右オツマ・ユディットのベングビール党首、極右ノームのマオズ党首で昨年結成された反アラブの連合極右政党だ。今回の総選挙では、ベングビール氏が占領地ヨルダン川西岸の併合やパレスチナ人の追放を主張、東エルサレムのパレスチナ人暴徒に対し、自らも拳銃を持って現場に駆け付け、治安部隊の実弾使用を要求するなどして注目され、極右の支持を集めた。ベングビール氏は、米政府からテロ組織に指定されていた極右・人種差別的組織の指導者である故メイル・カハネ氏を信奉し、自らも人種差別の扇動やテロ組織への支援で有罪判決を受けている。イスラエルやヨルダン川西岸で今年3月以降、パレスチナ人によるテロ事件が多発している状況を背景に、イスラエルの若者の間で支持を広げたといわれている。

一方、パレスチナは、イスラエルとの対立が激化するとして懸念を強めている。パレスチナ自治政府のシュタイエ首相は、「イスラエル総選挙の結果から、イスラエルには平和のためのパートナーがいないことを確認した」と述べた。アッバス議長は沈黙を保っている。これまでパレスチナの指導者らは、和平交渉再開を願い、イスラエルの左派政党を支持し関係を維持してきた。

メディアでは、バイデン米政権や一部の中東諸国が、強硬姿勢を示す極右政党の台頭に懸念を示していると報じられている。ネタニヤフ氏は、既に連立協議に向け始動している。今後、イスラエルで右派と極右の連立政権が発足すれば、地域の緊張の高まりや、対米関係、中東外交へも影響が出る可能性がある。

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