イランで将校や科学者の死亡相次ぐ イスラエルが関与か

シリアのイラン拠点に攻撃も

イランでは、5月下旬以降、イラン革命防衛隊(IRGC)の将校や科学者らが死亡する事件が相次いだ。イランは、これらの一連の事件にイスラエルが関与していると主張。両国の対立が激化している。(エルサレム・森田貴裕)

IRGCの精鋭部隊「コッズ部隊」のホダイ大佐が5月22日、イランの首都テヘラン中心部の自宅前で、オートバイ2台に分乗した2人から銃撃を受け死亡した。イスラエルの対外情報機関モサドのエージェントとみられている。イランの秘密軍事タスクフォース「840号部隊」を指揮していたホダイ大佐は、シリアへの武器密輸や、世界中のイスラエル人やユダヤ人に対する誘拐と攻撃を計画したとされている。イランのライシ大統領は「報復する」と宣言した。

テヘラン近郊パルチンでは25日、ミサイルや核、ドローンなど軍事技術の開発を行っている国防軍需省の研究施設で、ドローンによる攻撃があり、爆発で技術者1人が死亡し、1人が負傷した。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、イスラエルの攻撃手法と一致すると報じた。

テヘラン近郊カラジでは30日、840号部隊のエスマエルザデ大佐が、自宅のバルコニーから転落して死亡した。イランの公式メディアはすべて、事故または自殺として伝えたが、英国に拠点を置くTVチャンネル「イラン・インターナショナル」は、IRGCが同大佐をイスラエルに内通した嫌疑で処刑した可能性があると報じた。

イラン中部ヤズドでは31日、ミサイルやドローンの開発に関与していた航空宇宙科学者のエンテザリ博士が、夕食会に出席し帰宅後、急に容体が悪化し、病院で死亡した。食事に招いた人物は、直後に行方をくらましたという。また、6月2日には、北西部タブリーズへの出張からテヘランに戻った地質学者のアガモライ博士が、重度の吐き気や下痢に苦しんだ後、死亡した。イスラエルのメディアによると、アガモライ博士は中部ナタンツの核施設で働いていたという。ニューヨーク・タイムズは、イラン当局者らの話として、イスラエルによってイラン科学者2人が毒殺された可能性があると報じた。

6月12日、IRGCの航空宇宙部門の軍将校2人が別々の事件で死亡した。報道では、2人がどのように死亡したかについての詳細は明らかにされていないが、イランのタスニム通信は、将校1人が自動車事故で死亡したと伝えた。イラン国防省は、2人を「殉教者」としている。これは通常、重要任務に就いていた死者に与えられる呼称だ。イラン・インターナショナルが報じたところによれば、2人はイランが支援するレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラのための武器を開発していたという。

イランでの一連の死亡事件に加えて、ここ最近は、イスラエル軍によるとみられるシリアの首都ダマスカス近郊にあるイランに関連する拠点や武器庫などを標的としたミサイル攻撃が頻繁に行われている。

イスラエルは、イランの代理勢力であるヒズボラに、シリア経由でイランの高度なミサイル技術が渡ることを恐れている。ヒズボラは、対イスラエル攻撃用のロケット弾やミサイル数十万発を保有するとみられている。

2015年核合意の再建をめぐる交渉は停滞しており、合意違反を続けるイランは、核開発を進めている。イスラエルのベネット首相は、「イランの核兵器生産が間近に迫っている」と警告。国際社会に対して、イランの核開発計画と野心に対する圧力を強めるよう求めた。

イスラエルとイランの間で、暗殺とテロの報復が繰り返され、両国の対立がさらに激化することが懸念される。