イラン 10番目の核保有国の恐れ

IAEA事務局長「数週間が正念場」

2021年テヘランで、イランのサレヒ原子力長官との会談に向かう国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(中央)=イラン原子力庁提供(AFP時事)

核保有国入りを目指す国の動向で、10番目の核保有国になる最短距離にいるのはイランだ。イランの核兵器を最も恐れているのは宿敵イスラエルだが、スンニ派の盟主サウジアラビアもイラン(シーア派)の核兵器開発をただ静観していることはないはずだ。同じことが、エジプトにもいえるだろう。イランの核兵器製造はイスラエルとアラブ諸国にとって悪夢だ。(ウィーン・小川 敏)

ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)は6日から5日間の日程で定例理事会(理事国35カ国)を開催したが、焦点はイランの核問題だった。米英仏は、イランがIAEAの査察要求を受け入れず、核合意に反してウラン濃縮活動を推進しているとして非難決議案を提出。イランは8日、それに反発してIAEAの監視カメラ2台の稼働を停止した。

非難決議が賛成多数で採択されると、イランは9日、同国内の核関連施設に設置された27台の監視カメラを撤去するとIAEA側に通告している。2015年に締結された「イラン核合意」の再建交渉は一層難しくなってきている。

理事会開催に先駆け、IAEAは5月30日、最新の「イラン核報告書」を理事国に提出した。それによると、イランの濃縮ウラン貯蔵量はイラン核合意で定められた上限202・8㌔をはるかに超え、同15日の段階で3809・3㌔と18倍以上に急増している。濃縮度20%の高濃縮ウランの量は238・4㌔、60%以上は43・1㌔と推定されている。

核兵器用に必要な濃縮ウランは濃縮度90%だ。問題は、「濃縮度20%を超えれば、90%までは技術的に大きな問題はない」(IAEA専門家)ことだ。イランの核開発計画は核拡散防止条約(NPT)など国際条約の違反であり、国連安全保障理事会決議2231と包括的共同行動計画(JCPOA)への明らかな違反だ。

グロッシIAEA事務局長は理事会初日の今月6日、「イランは、核爆発をもたらす濃縮ウランの量を示す有意量まで、あと数週間だ」と警告を発している。イランは核兵器開発の疑惑に対し、「核兵器を含む大量破壊兵器はイスラムの教えに反する」と強調し、核兵器製造の意思がないと繰り返し主張してきたが、実際は既に核兵器の製造能力を獲得している。核兵器用の濃縮ウラン製造能力、核兵器の運送手段、ミサイル開発などを総合した核能力をイランはほぼ獲得済みだ

イラン核合意の再建交渉が暗礁に乗り上げ、イランが核開発計画を加速すれば、イスラエルは軍事力を駆使してもそれを阻止しようとすることは必至だ。テヘラン側がIAEA側の要求に応じ、核合意再建交渉に乗り出すか、今後数週間が正念場となる。

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