エルサレム聖地で衝突相次ぐ ガザからはロケット弾

暴力連鎖の危険性も

15日、エルサレム旧市街にある「アルアクサ・モスク」の敷地内で、イスラエルの警官隊と衝突するパレスチナ住民(AFP時事)

イスラエルでは3月22日以降、4件のテロ事件で14人が死亡した。エルサレム旧市街にあるイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)では、イスラム教のラマダン(断食月)に当たる4月に入り、パレスチナ人とイスラエル警察との衝突が相次いでいる。ユダヤ人の過激派グループが、イスラム教徒の感情を逆なでするような行動に出るなど、再びパレスチナ紛争が激化する懸念が高まっている。(エルサレム・森田貴裕)

ユダヤ人の過激派グループが、神殿の丘で神への供え物としてヤギを犠牲にする「燔祭(はんさい)の儀式」を行った者には賞金1万シェケル(約40万円)を与えるとフェイスブックに投稿した。これを受けイスラム組織ハマスは13日、声明で「いかなる犠牲を払ってでも阻止する。これは、ラマダン期間中のわれわれイスラム教徒に対する直接の攻撃であり、一線を越えるものだ」と述べた。警察は14日、儀式を計画していたユダヤ人過激派6人を逮捕した。

エルサレム旧市街の聖地では15日、イスラム教の金曜日朝の礼拝直後、ハラム・アッシャリフにあるアルアクサ・モスクの敷地内で覆面をした暴徒が治安部隊に投石するなどし、イスラエル警察とパレスチナ人暴徒との数時間に及ぶ衝突が起きた。暴徒の中には、ユダヤ教徒が神に祈りをささげる「嘆きの壁(西の壁)」に向けて、投石したり、花火を発射したりする者もいた。警察は催涙ガスや閃光(せんこう)弾などで応戦し、暴徒500人を拘束。この衝突で、パレスチナ人150人以上が負傷した。

17日朝には、パレスチナ人数百人が、ユダヤ人の聖地訪問を妨害し、公共バス数台に投石し乗客5人が負傷した。アルアクサ・モスクの中に、投石に使う石などを運び込んでいるパレスチナ人と治安部隊が衝突。パレスチナ人十数人が負傷した。

ベネット首相は、ラマダンの残り2週間、ユダヤ人の聖地訪問を禁じたが、22日にも、金曜午後の礼拝後、パレスチナ人数百人が聖地から、ユダヤ人が祈っている西の壁に石を投げ、花火を発射した。治安部隊は聖地で暴徒を鎮圧し、衝突でパレスチナ人57人が負傷した。

ガザ地区からは、18日から22日にかけイスラエル南部に向けてロケット弾が発射された。イスラエルのミサイル防空システム「アイアンドーム」が迎撃したが、1発がスデロット市の住宅近くに着弾し、建物や車数台に被害が及んだ。

ガザ地区から発射されたロケット弾は、イスラム聖戦によるものとみられているが、イスラエル軍は、ガザ地区を実効支配するハマスに全ての攻撃の責任があるとして、報復にハマスの武器製造施設など軍事拠点を標的として空爆を行っている。

ヨルダンのアブドラ国王は21日、首都アンマンで開催されたアラブ連盟の閣僚級会合で、エルサレム聖地での紛争激化を食い止めるために、アラブ諸国の結束とさらなる努力の必要性を強調した。また、イスラエルに対しては、アルアクサ・モスクの歴史的および法的現状を尊重し、イスラム教徒の権利を保護するよう改めて要請した。

アラブ連盟は声明で、「イスラエル治安当局の行為は、イスラム教徒の感情を露骨に侮辱・挑発するものであり、地域と世界の安全と安定を脅かす暴力の連鎖を引き起こす危険性がある」と述べた。

過去にベギン首相など3人のイスラエル首相のアラブ問題担当副顧問を務めていた中東イスラム研究協会のイツハク・ライター会長は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「イスラエルの警官は、暴徒鎮圧の際、土足厳禁のモスクに靴を履いたまま踏み込み、イスラム教徒にとって第3の聖地で閃光弾を使用している」と指摘する。「警察は、エルサレム聖地やモスク内での衝突を避けて、投石を予防する措置に焦点を当てるべきだ」と述べた。

昨年5月には、ラマダン期間の最後に聖地で激しい衝突が起き、イスラエル警察の行動に猛反発したハマスがエルサレムに向けロケット弾を発射。イスラエル軍が報復としてガザ地区を空爆した。11日間に及ぶ交戦で、パレスチナ人253人が死亡し、イスラエル側も12人が死亡した。

ラマダンが終わるまでの期間、多くのイスラム教徒が参拝に訪れるエルサレム聖地での緊張が続く。

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