イスラエルでテロ拡大の懸念 西岸北部で自治政府支配弱まる

広範囲な紛争の恐れも

8日、イスラエルの商都テルアビブの銃撃現場で、犠牲者を悼みろうそくをともす人々(AFP時事)

イスラエルのテルアビブで7日、パレスチナ人が銃を乱射し、3人が死亡、10人以上が重軽傷を負うテロ事件が発生した。治安部隊の銃撃で死亡した容疑者は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸北部ジェニンの出身で、単独犯とみられる。ここ数週間に発生したテロ攻撃は4件目で、犠牲者は14人に上った。イスラエルはさらなるテロ攻撃に警戒を強めている。(エルサレム・森田貴裕)

イスラエル軍は、ジェニンでテロ活動に関与した容疑者の逮捕を行っており、パレスチナ人住民と軍との間で衝突が起き、パレスチナ人に死者も出ている。

イスラエルは、オスロ合意の一環として1996年にジェニンの支配権をパレスチナ自治政府に引き渡した。近年、西岸北部での自治政府の支配力は弱まっており、ジェニンはパレスチナ武装勢力の拠点と見なされている。

元イスラエル戦略問題省副長官で、テルアビブ大学国家安全保障研究所(INSS)の上級研究員、コビ・ミハエル博士は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、ジェニンでのイスラエル当局によるテロリスト掃討作戦が長引くほど、西岸地区からのテロ攻撃が拡大する可能性は高くなると警告する。さらにガザ地区のイスラム組織ハマスを巻き込み、広範囲な紛争につながる恐れもあるという。

ミハエル氏は、「イスラエル当局は、ジェニンのイスラム聖戦の攻撃能力やインフラを弱体化させ、ガザ地区からのイスラム聖戦の報復にも備える必要がある」と主張した。パレスチナ自治政府の支配力が行き届いていない地域はジェニンのほか、西岸北部の至る所にテロの温床が存在するという。ミハエル氏は、「イスラエル軍が介入し、ジハード(聖戦)主義に染まった地域を一時的にイスラエルの管理下に置くことで、イスラエル国内でのテロ攻撃を防ぐだけでなく、将来的にはパレスチナの存続を確実にする」と述べ、状況が悪化する前にそれらの地域でテロ活動の取り締まりを強化する必要性を訴えた。

ライヒマン大学国際テロ対策研究所の創設者で事務局長のボアズ・ガノール教授は、メディアラインで、「イスラエル軍は、西岸地区北部地域のイスラム過激派武装勢力を一掃する作戦に備える必要がある」と述べた。また、「その作戦は可能な限り最速の方法で実行しなければならない。作戦終了後、軍は一度撤退し、パレスチナ自治政府が支配を取り戻すため、統制権をパレスチナ治安部隊に引き渡す必要がある」と述べた。

ガノール氏によると、自治政府がしっかりと統治している地域からテロ攻撃が発生することはほとんどなく、自治政府のアッバス議長は、テロ攻撃がパレスチナの利益を損なうことをよく理解しているという。アッバス氏がパレスチナ自治政府議長に就任した2005年以来、自治政府は治安の安定に向けてイスラエル軍と緊密な連携を取っている。

2000年に始まった第2次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)で、自爆テロの波を止めようとしたイスラエルは、パレスチナとの境界に高さ8㍍のコンクリート製の分離壁を建設した。この分離壁によって、テロ攻撃は大幅に減少した。境界の一部には有刺鉄線が張り巡らされた柵が設けられている。柵に裂け目のある場所は人の行き来が可能になっており、そこからは毎日、何千人ものパレスチナ人労働者がイスラエル側に入ってくる。イスラエル政府は、パレスチナ人の経済的な苦境を和らげる方法として、これに目をつぶっている。

元警察官で犯罪学の専門家であるヘブライ大学のシモン・ペリー教授によれば、ほとんどのパレスチナ人は生計を立てるために境界柵の裂け目を使用しているが、イスラエル人に対するテロ攻撃を実行するためにその場所を使用するパレスチナ人はごくわずかだという。

イスラエルでは16年にも、単独犯のテロ攻撃が多発した。ナイフや銃、車を使った体当たり攻撃は数百件に上り、テロ攻撃の波が収まるまでに数カ月を要した。

ヨルダン川西岸でのイスラエル当局によるテロ活動の取り締まりは始まったばかりで、イスラエルに対する武装勢力のさらなる攻撃が予想される。テロ攻撃の高まりが西岸地区の他の地域や、ハマスが実効支配するガザ地区に波及することが懸念される。

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