イラン核合意再建に向け進展 警戒強めるイスラエル

イランの精鋭部隊「革命防衛隊」の公式ウェブサイトで2月9日に公開された地対地ミサイル(AFP時事)

ウィーンで昨年11月に再開されたイラン核合意再建に向けたイランと米国の間接協議で、イラン外務省は2月21日、 「交渉で大幅な進展があった」と発表した。イランのライシ大統領は、合意に達するには米国の制裁を解除する必要があると再度訴えた。ただ、イランは核合意が復活し制裁が解除されたとしてもウランの高濃縮は続けるという。
(エルサレム・森田貴裕)

中東で核拡散の危険も

合意文書の草案は第1段階として、ウラン濃縮度を5%に制限している。しかし、イランのメディアによると、イランのエスラミ原子力庁長官は「ウラン濃縮度の上限は現在、最大60%で継続している。間接協議で制裁が解除されたとしても、ウランを20%まで濃縮し続ける」と語った。

ウランの濃縮度を20%に高めれば、兵器級の90%の高濃度ウランを比較的短期間で製造できる。濃縮度を60%に高めれば、核兵器製造に必要な核物質を獲得するまでの期間が大幅に短縮される。

2015年のイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」では、イランの核兵器開発を防ぐためウラン濃縮度を3・67%までに制限している。トランプ前米政権が18年5月に核合意から離脱し、対イラン制裁を再開して以来、イランは核合意で定められた義務に違反し続けている。イランは、ウラン濃縮度を高め、昨年4月には濃縮度を60%以上にまで進展させた。国際原子力機関(IAEA)は昨年11月、イランは濃縮度60%のウランを推定で17・7㌔貯蔵していると報告している。

一方でイランは2月、新型ミサイルを公開した。イラン革命防衛隊(IRGC)が国内で開発した長距離ミサイルで、従来のミサイルより重量が3割程度軽く、発射までに必要な時間は6分の1になったという。また、固体燃料を使い、操縦性に優れ、ミサイル防衛網を突破することが可能という。射程は1450㌔あり、イランと激しく対立するイスラエルや湾岸諸国の首都、中東の米軍基地も射程内に収める。イラン核合意の中で、ミサイル開発については一切触れられておらず、核合意違反にはならない。

ロンドンに拠点を置くシンクタンク国際戦略研究所(IISS)によると、イランは約20種の弾道ミサイルのほか、巡航ミサイルやドローン(無人機)も保有しているという。イランは昨年末の軍事演習で、イスラエルへの警告を含め16発の弾道ミサイルを発射した。中東で最大のミサイル兵器保有国であるイランが核兵器の開発に成功した場合、弾道ミサイルに核弾頭を搭載することが可能となる。

イスラエルのベネット首相は2月20日、「イランとの新たな合意は、中東地域をより不安定にする可能性が高い」と警告。「イランの核開発は、イスラエルの安全保障上重大な脅威を及ぼすものであり、断固として容認できない」と述べた。イスラエルは、ウィーンでの間接協議がイランの核開発を抑制できなかった場合、イランの核施設への軍事攻撃も辞さない構えだ。

イスラエル紙エルサレム・ポストによると、米国に本社を置く地政学的戦略コンサルタント「ウィキストラト」の13カ国31人の専門家によるシミュレーションは、イスラエルがイランを軍事攻撃した場合、攻撃後の数年間で、中東はイスラエルだけでなくイラン、そしてサウジアラビアにも核兵器が拡散するという結果を予測した。イランは核兵器保有をさらに強く願望し、北朝鮮のようになるという。サウジは、イランの核報復を恐れ、独自で核開発を行うようになる。イスラエルの攻撃が失敗した場合、核開発を急速に進めることになり、攻撃が成功した場合には、サウジとイスラエルの国交正常化につながる可能性があるという。

イスラエル外務防衛委員会の元メンバーで国家安全保障研究所のオフェル・シェラフ上級研究員は、エルサレム・ポストで、70年前のベングリオン初代首相の格言を引用し「イスラエルは、軍事力だけで紛争を終わらせることはできない。問題の解決策が武力であるという幻想をやめ包括的な外交政策を策定する必要がある」と述べた。
イスラエルに加え、イランやサウジが核兵器を保有すれば、中東地域はさらに不安定化することになる。

spot_img
Google Translate »