【ポイント解説】技術は低から高へ流れる
水は高きから低きへ流れるものだが、技術や頭脳は違う。より高みを目指して上っていく。30年前、日立製作所の研究職の知人が言っていた。当時は韓国、中国などからインターンを受け入れていたが、彼らの熱心さは日本人の比ではなかったという。なんでも吸収していこうという意欲に溢(あふ)れていた。日本の技術が全部吸い取られてしまうのではないかと心配するほどに。
鉄鋼大手で東南アジアからのインターン受け入れを担当している知人は、彼らの優秀さを絶賛する。人材のほとんどがベトナムで大学院を出た人ばかりで、日本語能力も高い。そして何よりも「国」に対する考えが違う。技術を習得し帰国して故国の技術・産業水準を高めるという確固とした使命感を抱いているというのだ。
韓国で技術者が中国企業に転職したり、頭脳や技術の流出が起こっているのと同様に、わが国でも早くから、技術者が中国に引き抜かれていった。大きな理由は待遇や処遇への不満で、中国はそこに付け込んで、人を獲得することで核心技術を得ていった。彼らに「愛国心はないのか」と問うことはできない。努力や成果に見合う評価をしてこなかった国内企業や国家にも責任の一端があるからだ。
2022年に経済安全保障推進法が制定されたが、これは軍事技術への転用が可能な最先端技術に関する特許の流出を防ぐもの。核心的な産業技術には不正競争防止法で厳罰が科せられる。
だが、これは今ある技術について規制されるものであって、将来生み出されるであろう「頭脳」の流出を止めるものではない。経済安保推進法では「先端的な重要技術の開発支援」を掲げる。水が上っていく高みが国内にあることが保護の一番手だ。
(岩崎 哲)






