トップ国際朝鮮半島「堂々外交」と「実用外交」が俎上に 李在明政権発足から1年

「堂々外交」と「実用外交」が俎上に 李在明政権発足から1年

1月5日、北京で握手を交わす韓国の李在明大統領(左)と中国の習近平国家主席(EPA時事)
1月5日、北京で握手を交わす韓国の李在明大統領(左)と中国の習近平国家主席(EPA時事)

 韓国の李在明政権が発足して1年。李大統領が胸を張る「実用外交」と「堂々とした姿勢」が俎上(そじょう)に載っている。「風は吹いているが、方向が見えない」という評価だ。

 月刊中央(6月号)で国際問題アナリストの李長勲(イジャンフン)氏は「米国と中国という強大国の間で振り回されず、韓国の声を明確に出す『堂々とした姿勢』を外交の核心価値にした点はかなり評価できる」と述べる。しかし、新東亜(6月号)に登場した外交部政策諮問委員の朱宰佑(チュジェウ)慶熙大教授は「風は吹いているが、行くべき方向が見えない」と辛い評価だ。

 就任1年で朝鮮半島に強い影響力を持つ周辺4強大国(日米中露)のうち3国の首脳と複数回会談しているのは高く評価される(李長勲氏)が、中身を子細に見れば、不協和音や実質のなさが目に付く(朱氏)というわけである。

 朱教授の指摘を見てみる。まず対米関係では、李大統領はドナルド・トランプ米大統領との会談で、原子力潜水艦建造で合意した。だが原潜の建造に必要なウラン濃縮案や核燃料再処理を交渉する機関(主体)が決まっておらず、具体的に動きだせないでいる。

 鄭東泳統一部長官(大臣に相当)が公表されていない北朝鮮の核施設「亀城」について国会で言及した。米国はこれに抗議し、韓国との軍事情報共有に制限を加えた。米国は、鄭長官に対しては北朝鮮の「2国家論」容認の態度にも不信感を募らせていた。亀城言及への抗議の他に、「9・19南北軍事合意」(敵対行為の全面的な中止、2018年)の復元方針に対する強い反発も反映したものだ。

 中国との関係に対しても、朱教授は厳しい見方をしている。李大統領と習近平中国国家主席はこの短い期間に相互に国賓訪問をした。「平均水準以上」と李長勲氏は高く評価するが、韓国が中国に最も期待する「北朝鮮核問題」では中国は留保的姿勢を崩さず、首脳会談後の発表文でも全く触れなかった。

 中国は北朝鮮がロシアとの関係を強化していることに対抗し、王毅外相に韓国より先に北を訪問させ、最近では習主席が北朝鮮を国賓訪問して、中朝関係の再強化に乗り出しており、韓国の外交力量ではこの壁を突破することは難しい。

 中国が韓国の期待とは裏腹の行動をする中で、むしろ黄海韓中暫定措置水域(PMZ)に「無断で」構造物を設置し、昨年は黄海管轄海域に中国の航空母艦が「8回も」進入、中国軍用機の韓国防空識別圏(KADIZ)への飛来も増加するなど、韓国を無視した軍事行動をほしいままにしており、韓国側は神経をとがらせている。相互に国賓訪問をしながらも、韓国は欲しいものを手に入れていないのが実情だ。

 対日関係では、高市早苗首相と2025年慶州でのアジア経済協力会議(APEC)首脳会議で会談し、その後の李大統領の奈良県訪問、今年5月の高市首相の韓国安東訪問でシャトル外交が行われた。奈良県は高市首相の出身地・選挙区であり、安東は李大統領の故郷だ。文在寅政権時代「最悪の関係」に陥った日韓関係だが、(前政権である)尹錫悦政権が行った関係改善の基調は崩れていない。

 李大統領は大統領になる前は強硬な反日発言で知られていた。ところが北核問題、中国の覇権主義、米国の関税・安保圧力など共通した課題を抱えて、日本との協力が必須の状況で、自身の対日スタンスを控えて「実用外交」を実践してきた。

 だが、ここにきて少し綻(ほころ)びが生じている。現在の日韓間の課題は物品役務相互提供協定(ACSA)に移ってきているが、李大統領が「国民情緒」を理由に「時期尚早」と難色を示したのだ。さらに「既に(日本は)謝ったのに、またごめんと言わなければいけないのか、(という日本の態度)では心が通じない」と謝罪問題に触れてきた。最近になって支持率が落ちてきたことと関連があるのかは不明だが、歴代政権のように反日カードに手が伸びているのか、不信感を呼ぶ発言だ。

 こうした課題は多いものの、李長勲氏も朱宰佑教授も「実用外交は適切なもの」だと肯定的に評価している。グローバルサウスにも目を向けている李大統領の外交を評価するのには、もう少し時間が必要だ。

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