
韓国で民主主義の根幹を揺るがす荒唐無稽で深刻な事態が発生した。一部の投票所で選挙当日、投票用紙が底を突き、有権者がしばらく待機したり、投票を放棄して帰らなければならない前代未聞の行政惨事が起こったのだ。
これは、選挙管理の基本中の基本である有権者数の算定と、それに伴う用紙配付すらきちんとできなかったという意味だ。もし中国当局が2014年、香港の「雨傘革命」と言われる民主化デモを鎮圧して統制する過程で、物理的暴力や法的処罰ではなく、「投票用紙が足りない」という行政的な言い訳をして投票権を制限したならば、むしろ「奇抜な弾圧」として国際社会の嘲笑と共に、デモ隊の怒りはさらに抑えきれないほど激しく燃え上がったことだろう。
中国当局の香港統制が好みに合う候補者だけを出馬するようにした緻密な政治的計算だったとすれば、今回の地方選挙での投票用紙不足事態は、初めから有権者の参政権自体を行政的な無能で遮断してしまったようなものではないか。民主主義の先進国を自称する大韓民国で、国家的な選挙の事務を総括する機関の安易な態度によって、有権者の基本権が物理的に遮断されたことは、行政の刷新や選挙管理委員会の解体レベルの強力な改革がなければ、容認できない事態だ。
今回の事態は、単純な「行政のミス」として片付けることができない。憲法が保障する平等選挙と普通選挙の価値を国家機関が自ら毀損(きそん)した行為だ。特定の時間帯に投票所を訪れた国民が、国家の準備不足によって待機を強いられたり、投票を放棄させられたことは、事実上、国家による参政権の剥奪と変わらない。
情報技術(IT)強国であり、世界で最も精密な行政情報ネットワークを誇る韓国で、選挙当日に投票用紙の数量すら合わせられなかったことは、システムの総体的な崩壊であり、全世界の民主主義諸国の中でも類例を見つけるのが難しいほどの恥ずべき記録だ。
さらに深刻な社会的副作用は、今回の事態が韓国社会の理性的土台を脅かす極端な不正選挙陰謀論者たちに、再び息を吹き返す機会を与えてしまったという点だ。選管委が自ら招いた致命的な行政ミスは、徹底した批判と司法的な調査の対象になって当然だが、これは、これまで陰謀論者たちが主張してきた荒唐無稽なフェイクニュースに正当性を与えるものでは決してない。
しかし、選管委の致命的な無能は、結果的に理性的な批判の領域を消してしまい、あらゆる不信とフェイクニュースという怪物を育てる決定的な口実を提供し、莫大(ばくだい)な社会的費用を加重させている。
香港の人々はかつて命を懸け、今はうらやましくてたまらない韓国の投票権が、機関の安易な姿勢と陰謀論者たちの扇動の間で傷ついている現実に対して、選管委の骨身に染みる反省と、人と組織の全面的な刷新が不可欠となっている。
(李佑中<イウジュン>北京特派員、6月8日付)






