トップ国際朝鮮半島サムスン電子騒動が波紋 ストの連鎖に警戒広がる 韓国

サムスン電子騒動が波紋 ストの連鎖に警戒広がる 韓国

 法外な成果給を要求してストライキを予告した韓国最大手財閥サムスングループの中核企業、サムスン電子を巡る騒動が、韓国社会に波紋を広げている。半導体の製造に支障が生じて経済全体への打撃が危ぶまれるのはもちろん、ストに対する企業側の損害賠償請求訴訟を制限する改正労働法が直前に施行され、ストの連鎖に警戒感が広がっている。(ソウル上田勇実)

先月23日、韓国・平沢市(京畿道)で行われたサムスン電子の「闘争・決起大会」で成果給の上限廃止などを求める労組員=韓国のテレビから
先月23日、韓国・平沢市(京畿道)で行われたサムスン電子の「闘争・決起大会」で成果給の上限廃止などを求める労組員=韓国のテレビから

 事の発端は、生成AI(人工知能)向け半導体需要の爆発的拡大などで過去最高益を更新するサムスン電子の社内最大労組が、成果給の選定方法の透明化や上限廃止などを求めて今月21日から来月7日まで4万人規模のストを決行すると予告したこと。

 労組は当初、営業利益の15%支払いや予想利益を超過した場合に支払われる「超過利益成果給」の上限をなくすことを求めたが、会社側が難色を示した。業績が良好なメモリー半導体部門では、1人当たり最大で約6億ウォン(約6400万円)の成果給が支払われることが明らかになり、「常識外れ」(韓国メディア)の要求は世論の反感を買った。

 労使交渉は過激な行動で知られる全国民主労働組合総連盟(民主労総)でトップを務めたこともある雇用労働相が土壇場で仲裁に乗り出し、スト突入のわずか1時間半前に劇的に妥結。「超過利益成果給」は従来通り年俸の最大50%支払うほか、営業利益に基づく「事業成果」の10・5%を新たに「特別経営成果給」として10年間自社株で支払うことなどで暫定合意し、ひとまずストは回避された。

 ただ、暫定合意に対する全労組員による賛否投票の結果次第では、再びストの危機に直面する。また合意通りになったとしても、会社側には技術革新が頻繁に起こる半導体事業で成果給の支払いを10年間固定させることへの負担は少なくないとされる。研究開発(R&D)や設備投資に回す財源が減る恐れがあるためだ。

 サムスンと言えば「NO労組」路線を貫いてきたことで有名だが、3代目の今のトップが政争に巻き込まれる形でこれを放棄。近年、社内労組が待遇改善の闘争を激化させる事態になっていたが、これに加え今回のスト予告の背景には今年3月に施行された改正「労働組合および労働関係調整法」、別名「黄色い封筒法」(判決で損害賠償を命じられた自動車メーカーの労働者に市民が黄色い封筒に入れた募金を手渡したことに由来)もあるとみられる。

 同法は、勤労契約締結の当事者でなかったとしても勤労条件を実質的・具体的に支配・決定できる者を使用者と認め、元請け会社が下請け労働者との直接交渉に応じることを義務化させた上で、元請け会社がストなどを巡り下請けを相手取って起こす損害賠償訴訟を制限する内容を盛り込んだ。「下請け・関連の労組が黄色い封筒法を根拠に会社側から提訴されないことを信じ、違法なストを乱発する恐れ」(法曹関係者)が指摘されている。

 保守系大手紙・朝鮮日報は社説で「サムスン電子の1次下請け約1700社、2次下請け約2万社の労組が同社を相手取りドミノ式に直接交渉を要求した場合、同社は365日交渉とストのリスクに直面する。それでもグローバル技術競争で生き残れるだろうか」と指摘した。

 サムスン電子が成果給を巡り過度な要求をした今回の事態は、すでに現代重工業(造船)やLG U+(携帯電話)、カカオトーク(スマホ用メッセンジャーアプリ)など産業界全般の下請け・協力会社に波及。海外の工場で働く外国人労働者たちまで「自分たちも本社に貢献したから成果給を払え」と主張し、集団行動に乗り出す恐れも出始めている。

 李在明政権は来月3日の統一地方選を前に、「親労働者色の濃い黄色い封筒法」(朝鮮日報)で労組の組織票をがっちり固めたい思惑がありそうだが、一方でサムスンがストを決行すれば韓国経済全体への打撃は避けられず、一時はストを30日間禁止できる「緊急調整権」の発動まで検討した。事態収拾に苦心している。

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