トップ国際朝鮮半島「正しい政治」とは何か 「政治の長兄」が語る民主主義

「正しい政治」とは何か 「政治の長兄」が語る民主主義

 韓国は民主化を実現した。その過程では軍事政権などによる行き過ぎた「取り締まり」が繰り返された。民主化運動家からしたら「弾圧」であり「拷問」だったが、軍事政権から見れば「共産主義者や国家転覆の試みの取り締まり」だった。

 このように立場が違えば評価も違ってくる。尹錫悦大統領(当時)による戒厳・弾劾事態も、民主化運動から見れば「民主主義の勝利」となる。

 月刊中央(4月号)で民主化運動記念事業会の李在五(イジェオ)会長(81)が語っている。李氏は「民主化の歴史的かつ生きた証人」だ。「1964年の韓日交渉反対運動から87年6月の蜂起(民主化抗争)まで」運動の中心にいた。その間5回逮捕され、10年間を刑務所で過ごした。当時、共産主義運動などを取り締まった「南営洞対共分室」で「40日間拷問された」経験も持つ筋金入りの活動家だった。現在、この南営洞対共分室は民主化運動記念館に改装され、同事業会が入っている。

 李氏は戒厳・弾劾事態を「これほど民主主義体制がうまく機能している国は世界でもなかなか見つからない」と胸を張る。「12月3日の非常戒厳令は国会によってわずか2時間で解除され、大統領選は6カ月後に行われ、政権交代もした」と述べる。

 ただ、見方を変えれば評価も180度変わる。2016年の朴槿恵大統領弾劾事態について、「大統領になったスパイ」の著者、張詠寛(チャンヨングァン)氏は「弾劾に追い込んだ勢力の本質は、親北左派による一種の革命であり、反乱だ」と指摘する。今回の尹氏の場合も「第二の革命・反乱」だったと本紙特派員の質問に答えている。

 「民主主義」と「革命・反乱」では真逆の言葉だ。その弾劾事態を「民主主義が機能した」という李在五氏自身が、実は「われわれの民主主義が本当にうまく機能しているのか疑問に思うし、最近の政治の世界を見るとそうではないと思う」と苦言を呈するのだ。

 左派与党共に民主党が多数を占める国会、その左派与党に支えられた李在明政府におかしいと注文を付けているわけだ。何がおかしいか。韓国の民主主義は「皮相的」なのだ。李氏は言う。

 「相互尊重や少数派への配慮がない。少数派は民主主義の核である。今多数派であれ少数派であれ、彼らは民主主義を利用して権力を維持している。それは本当の民主主義ではない。政治の世界が権力の手段として利用しているため、団結はなく、対立や分断が増大しているだけだ」

 尹氏が戒厳に踏み切ったのも、当時野党だった民主党が多数を笠(かさ)に着て、ことごとく法案を葬り去り、政府を縛り付けて機能不全状態にしたからだった。今も民主党は李大統領退任後を見据えて、都合のいい法改正を行っている。この状態を見て李氏は「皮相的」と言うわけだ。

 その一方で、保守野党国民の力にも注文している。尹錫悦氏との決別をすべきだと促す。そして同党の重鎮議員たちに「戒厳令を防げなかった責任」も問う。

 李氏は金泳三氏の下で国会議員となり、与党に籍を置きながら、李明博政府では大臣も務めた。最後に「政治の長兄」は憲法改正の必要性を強調する。5年1任制の“帝王的大統領”は絶大な権力を持つ。戒厳でも李在明政府の司法改革でも、その弊害が出ている。この課題を指摘する政治の長兄の声はどう政治家や国民に届くのだろうか。

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