
李在明政権の外交・安保政策を主導する魏聖洛・国家安保室長が、日韓関係と関連し、親北反日路線の「自主派」グループから「圧力を受けている」と関係者に漏らしていたことが分かった。元徴用工問題を巡る解決策の責任者で、昨年8月に事実上辞任していた財団トップが先日解任を要求されるなど、実際に不穏な動きも出ている。(ソウル上田勇実)
魏氏に近い関係者によると、魏氏は最近、対日外交について「歴史認識問題などで日本に厳格なアプローチを要求する声があり、そういう牽制(けんせい)を受けている」と漏らしたという。「厳格なアプローチ」を求めているのは、政権内部では李鍾奭・国家情報院長や鄭東泳・統一相ら。政権外部では林東源・元統一相ら歴代左派政権で主に統一相を歴任した人たちとみられる。
魏氏は米韓同盟や日米韓3カ国の連携を重視する、いわゆる「同盟派」。すでに「自主派」との主導権争いが表面化していたが、先月、韓国紙・京郷新聞とのインタビューで、「自主派」への不満や自分が更迭されかかったことなどを暴露し、物議を醸していた。
今月開かれた国家安全保障会議(NSC)の場でも、このインタビュー記事が取り沙汰された。ある出席者から「あのような発言をしたら与党とぶつかる心配があるのではないか」と言われたが、魏氏は「言うべきことは言う。自分の置かれた状況を説明しただけ」と反論したという。
魏氏は同関係者に「自分は内部の権力争いで孤独だが、李大統領の自分に対する信任度(の高さ)を考えると、心配する段階ではない」と語ったという。
実際、李氏の就任以来、「活発な首脳外交を常に至近距離でサポートする魏氏を、自主派の圧力があるからと言って切り捨てるとは考えにくい」(同関係者)。南北関係が事実上遮断され、最大の関心事である対北政策で力を発揮できない「自主派」が主導権を握りづらいのも確かだ。
ただ、日韓関係の個別懸案では懸念材料もある。
元徴用工訴訟を巡る政府解決策を進めていた政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」の沈揆先理事長に対し、管轄省庁の行政安全省は先日、解任を要求した。
沈氏は昨年8月に財団に辞表を提出し、事実上辞めた格好だった。だが、辞表は受理されず、臆測を呼んでいた。
解決策の軸は、勝訴した韓国人原告への賠償金支払いを、日本企業に代わって財団が韓国企業などからの寄付によって行う第三者弁済。だが、同省は内部監査で、受け取りを拒否した原告への支払金を裁判所に供託する過程で、書類への押印に財団の実印を使わず、認印などで済ませたことなどを「偽造印鑑を黙認」した違法行為に当たると判断したという。
昨年6月に大統領に就任した李氏は、第三者弁済の継続を表明したため、沈氏の続投が有力視されていたが、辞意表明と辞表不受理、さらに解任要求という展開に、解決策の行方が不安視され始めている。
そもそも李氏が第三者弁済の継続を表明したのは、「同問題の収束に意欲を示したというよりは、日韓関係の懸案にふたをしたいという消極的な動機から」(日韓関係筋)とも言われる。後任の財団理事長の方針次第では、第三者弁済が破綻し、再び徴用工問題で日韓関係が悪化しないとは言い切れない。
また戦前、海底炭鉱「長生炭鉱」(山口県宇部市)の水没事故で犠牲になった朝鮮半島出身者を含む元労働者のものとみられる遺骨のDNA鑑定を巡り、高市早苗首相が李氏に協力を約束した後も、日本側から鑑定結果が発表されずじまいだ。韓国では「時間を引き延ばす日本にもどかしさを感じる」(金永哲・遺族会事務局長)という不満も募っている。
反日に誘導しようとする「自主派」の圧力を魏氏がどこまではね返せるのか。日韓の火種が再燃する恐れは依然としてある。






